デッキ構築ローグライトゲームを何度も作り続けた結果に見えた面白さと課題点

この記事では、2024年夏から11月現在に至るまでに制作したデッキ構築ローグライトゲームを振り返ることで、このジャンルの面白さとは何なのかを発見していく体験型のゲーム考察記事である。

過去に制作した3作品の振り返り

2024年夏、急に「デッキ構築ローグライトを1日で作れないだろうか」と思い立ち、漂流船からの脱出をテーマとした「漂流猫ちゃん危機一髪ゲーム!」を1日で作って公開したことからこの話ははじまる。5枚のカードを用いて、満腹度を0%にしないようリソース管理しながら合成でカードを強化して本州帰還を目指すカード強化がキモのゲームだ。

これはとてもシンプルな構造なのだが、ここからデッキ構築ローグライトぽさを増やしていくために、バトル要素やコストという概念を追加していった。

詳しくは以下の記事を見てほしいのだが、ここからは以下記事では言及しきれなかった課題点を書いていく。以下記事を読まなくてもよい構成にしているはずだ。

カードの枚数が少ないと、パズル要素が強くなってくる

先ほど言及した漂流猫ちゃんのゲーム、まだ遊んだことがない方はぜひ遊んでみてほしい。

2~3回遊んだところでこれがデッキ構築ローグライトと言えるのか、考察に移ろう。

もしここで書かれた考察とは異なる考えをお持ちの方はぜひコメント欄に書いてもらえると嬉しい。

https://hothukurou.com/game/Ship/index.html

個人的にはシンプルな構成だが歯ごたえある難易度が面白いと思っている。またこのシンプルな構成が好きな人もたくさんいる。ただ、Slay The Spireと比べると何かデッキ構築ローグライトに足りないものがあるように感じる。

このゲームの構造は適切なタイミングで移動カード、剣カード、食料カードを強化していくことである。食料カードを強化しないと満腹度が尽きてしまうし、剣カードを強化しないと道中の敵を倒すことができない。その二つを適切な値にした上で移動カードで本州帰還を試みる。この移動・剣・食料という3つのカードを強化するリソース管理がゲームの中心要素なのだが、これがデッキ構築っぽいかと言われると何か足りないと思われたのではないだろうか。

そこで、ローグライト要素を追加したのが次の作品だ。

とりあえず遊んだことのない人は遊んでみてから考察をしていきたい。

・武装猫ちゃんのモンスター討伐ゲーム

https://hothukurou.com/game/CatBattle/index.html

このゲームは前作よりもデッキ強化方法が増えている。前作は二枚のカードを合成するか新カードを入手することがデッキ強化要素であったのだが、本作ではカードの数値を直接強化する強化カードが追加されている。これによって、デッキ強化方法が多様化して、戦略性は上がっている。

ただ、これをもってしてもデッキ構築ローグライトというよりはリソース管理パズルと考えた方がしっくりくる。この原因を2つ推測した。

一つ目はカード種類が6枚と少なすぎる点だろう。カード枚数が少ないと、全ての動作が想定内に収まってしまうため、与えられた枠内で成果を出すパズル感がどうしても出てしまう。

二つ目は1枚カードを出すと1ターン経過してしまう点だ。このゲームではターン経過でモンスターが追加されうため、少ないターンで攻略することが求められる。これはカードゲームというよりはパズルよりのゲームデザインだ。与えられたターン数で最適を目指すゲーム性になっているからである。

カード種類を増やすとデバッグが指数的に面倒になるのだが、それはやむなしということで次回作の製作を始めた。

ちなみに1ターンに無限にカードを出せてしまうのはさすがにゲーム性が崩壊してしまうので、カードコストの概念を導入することにした。

その次回作が以下となる。ぜひ遊んで考察してほしい。

カードを増やすだけでなく、デッキ構築パターンを増やすことで面白くなる

ゴシック猫ちゃんと宝石の塔ゲーム

https://hothukurou.com/game/Jewelry/index.html

課題はあるが、だいぶ「カードゲーム回してるなあ」といった感覚があるのではないだろうか。課題は後で書くとして、ゲーム性を書いていこう。

コストは3種類あり、それぞれ攻撃・回復・リソース強化と役割を分割している。これは、ハースストーンやSlay The Spireなどの既存のデジタルカードゲームが1種類のリソースしかないことに疑問を持ったため3つにしたのだ。(ちなみにこの目論見は外れ、前回の記事でも書いたが1種類の方が面白いという結論を得た。回復以外で使わないダイヤが貯まってもストレスになるだけだから。)

毎ターン以下のように宝石の宝箱を選択し、指定した宝石をリソースとして獲得する。このアイデアはボドゲでよくみる「リソースの組から一組を選ぶゲームシステム」に着想を得た。

カードにはコスト毎に攻撃力が設定されており、コストが大きいカードほど強力な攻撃を行うことができる。また、攻撃カード以外にも、次のターンダメージ2倍やら、即宝石獲得可能なカードもあったりと、戦略に幅が出るようにした。

これでだいぶ行けたんじゃないかなと思ったのだが、思ったよりもコメント欄が不満点を確認した。どうやらカードが増加したことで、強力なカードを獲得するためのカードピックの運ゲー要素が強まり、今までのリソース管理パズルとは異なる内容も伴って不満があったようだ。これは「ジャンル変更による問題」であるから、ある程度はしゃあないところ。ただ、この問題の一番大事な点は「強力なカード」が1種類に集中してしまった点であった。

具体的に述べると、すぐに宝石獲得カードがめちゃくちゃ強くなってしまった。リソースを多く獲得できるこのカードは全てのデッキにこのカードは必須級になってしまったのだ。(ちなみにこのすぐに宝石カードは三種類あるのだが、金塊4コストで+7宝石獲得するカードが一番評判がよかった。)

獲得できる宝石はランダムのため、このカードを使っても欲しい宝石が手に入らないだろうと想定していたのだが、リソース量を即時増やせるカードは思ったより強かったのだ。どうもプレイヤーの多くはこのカードを入手して、かつこのカードを使った宝石のランダム獲得に力を入れたデッキビルドを目指していたようだ。そうなると運ゲー感が高まるから不満が出てくるのだろう。

もちろん、このカードを入れたおかげで良い知見を得ることができた。

前回の振り返り記事を読んでいただいた方から、非常に参考になるリプライをいただいた。

つまり、宝石袋を連打して獲得した大量のリソースを用いて、普通はできないほどのカード連打していくことがたまらなく楽しいということである。

たしかに「うまくカードが揃って、強敵を圧倒的な力でなぎ倒す感覚」はかなり楽しいものである。その過程が苦しいほど、うまくいった時の快感は忘れられなくなる。

ただ、すぐに宝石獲得カードがどんなデッキでも必須級というのはいただけない。デッキ構築の楽しさを追求するのであればデッキビルドは多様な方が良い。色んなカードを用いて色んな方向性のデッキを作り上げてこそデッキ構築なのではないか、と思い至ったのだ。

以上の知見をまとめると、以下となる。

面白そうなデッキ構築ローグライトを作るためには以下の要素が必要なのではという推測が成り立つ。

ということで、4作目の作成を行ったのだった。・・・2か月後に!

ここからは2024年11月新作の説明に入る。

~本業の激務から解放されて~

私はサラリーマンエンジニアであるから、当然平日は働いている。現在なんでも屋さんとして、マイコンの組み込みからFPGA、果ては基板の回路設計までこなしていたのだが、好奇心に任せてタスク拾いすぎたせいで9月10月はあまりにも忙しく、全然新作が公開できていなかった。これはまずい。

多くの問題を残しつつも、とりあえず解放された10/28,29に溜まっていた代休を消化して久しぶりのゲーム制作に入った。人間うまくできているもので、激務により頭のリミッターが外れている時は限界を超えてゲーム制作に注力することが可能になる。人はつらい時でも叫び続けることでしか存在を示すことはできず、その叫ぶ行為が創作活動になるのだと思う。

ということで、10/28,29の2日でデッキビルドの基礎システムを完成させた。我ながら最速スピードである。その後の平日3日は出社して、帰宅後に作業。土曜日はあほげーという1日でゲームを制作するハッカソンがあったのでそこに参戦して格闘リバーシというノックアウトKOありの変則リバーシゲームを完成させ、日曜日に公開した。

・格闘リバーシ

https://hothukurou.com/game/Reversi/index.html

ということで、上記格闘リバーシの後で公開したものが本作である。

とりあえず、まだ遊んだことがない人は例によって遊んでみよう。

・勇者ネコのデッキダンジョンゲーム

https://hothukurou.com/game/CostCard/index.html

多様なデッキ構築ができるという目的から逆算してカード作成

この方法はものすごく効率的であった。「攻撃力の高いカードで攻めるアグロデッキ」「回復を使うと強化する強化カードを育てるデッキ」「めちゃくちゃカードを使えるデッキ」など、よくあるデッキ構築のビルドパターンを参考にしつつ、それぞれのデッキの必須カードを設定していった。

以下は当時の企画をまとめたnotionページである。

さて、ここでそれぞれのデッキに入るカードの効果を決めたら、そこでようやくプログラムの設計ができる。カードの型定義を書いていき、そのカード型を代入するとカードUIができるクラスを作成していき・・・とこのあたりは過去3回も作ったためかかなり慣れた調子でコーディングを進めていった。

最終的に、19種類もの効果を作成した。ここまで効果を増やすとさすがに説明文章が長くなってしまうため「カードはタップすると効果確認ウインドウを表示、上にスワイプすると発動」と前作にはないUIを追加した。こういうUI設計が一番面倒であるが、面白いゲームを作るならばしゃあない。

無事に作成したのだが、実際の感触を確認したいため、テストプレイ会を開いて様子を見たいところ。そこでdiscordチャンネルを開設してテストプレイ会を実施した。

実はdiscordチャンネルを開いた理由は他にもあった。「discordでコミュニティができたら、新作ゲームの宣伝が非常に容易になる」という点である。

先ほどの激務の中で「ちゃんとゲームでしっかり収益確保した方がよいのではないか」と朧気ながらに思い、そのためにはファンのコミュニティ化が必須であると思った次第。エンタメビジネスは、ファンコミュニティ形成が必須であるという話を以前有識者から聞いたことがあり、確かにその通りだと思い本腰を入れることにした。

現在steamにゲーム公開することを目指しているのだが、さすがに売る前に商品の販売予測は必須であるので、今後もテストプレイなどで利用していく所存である。そのうちこのサイトの広告収益の話などもしていくつもりなので、興味があればぜひ入会して場を活性化してほしい。300人くらい入ったら最高である。

・作っちゃうおじさんdiscord

https://t.co/iWrPQglEG9

さて、話は逸れたがここでのフィードバックを受けて再調整して公開したものが本作である。

新作デッキ構築ローグライトのふりかえりと考察

いつもはここでプレイヤーごとのデッキビルドごとのデータ集計を行ったり、勝率を公開していくのだが今回はそれをすっかり忘れてしまった。そのうち検証するかもしれない。

今はしゃあないのでコメント欄や感想から拾っていく。

回復杖デッキがめちゃくちゃ強くて人気

ポーションで回復して杖を強化していくデッキが好評であった。育成系カードというのはデッキ構築ではよくみるものであり、レベリング要素と、レベリング後の無双状態から人気が高い。

ポーションを使っていれば基本的に長期ターンでHPが0になることもないので、安定して勝てるデッキなのだろう。特に直すつもりはなく、こういう努力した果てにぶっ壊れちゃった感は快感である人が多いはずだし、実際意図通りにうまくいったように見える。

コンボデッキもかなり人気

0コストでデッキのカードをどんどん使っていくコンボデッキもかなり人気があった。カードを連続して使うとぶっ壊れちゃった感はとても大きく感じるし、何より楽しい。

元々このコンボデッキビルドはめちゃくちゃ弱かったので何度かテコ入れをして現在の状態に調整した。

暗黒攻撃デッキや剣+バーサークデッキはそこまで話題にならない

大して上記のデッキはそこまで話題にはなっていない。暗黒デッキは暗黒攻撃強化カード、剣デッキはバーサークによって強化されるのだが、これらのカードはカードではなく、本来永久バフ効果のアイテムとして付与するシステムにするとよかったように思う。初期デッキ選択時にアイテムを入手して、そのアイテムによってデッキ構築の方向性を決めるようにすると面白くなりそうだ。

デッキタイプ選択はゲームの寿命を延ばす

繰り返し遊ぶリプレイ性があるとゲームの寿命が延びるのだが、この方策として従来私が使っていた「難易度設定できる」以外にも「初期デッキを選択できる」という要素を今回取り入れた。

これがあると、「別のデッキで攻略できるか試してみたい」という楽しさをもとに再プレイするようになり、よりゲームを楽しむことができる。

元々、Balatroというポーカー+ローグライトゲームにおいてこのシステムが取り入れられており、実際プレイヤーは難易度を上げずに多様なデッキを試す方向で繰り返し楽しんでいたようなので採用した。Balatroについては私はいたく感動して最高難易度クリアだけでなく、内々に長文の感想と面白さについてしたためた考察文を作成していたのだが、これはおいおい公開したいと思う。

ちょっとデッキ完成が速すぎる、もっと必要パーツ増やしてもよかった

ここからは課題点を見ていく。だいたいリリースしてから一週間ほどたつと、有識者の反応から課題点が見えてくる。たいてい課題点がドンピシャでわかることは稀であり、いくつかの不満点から一つの根本の課題点が見えてくるものである。そこまで深ぼってから次回以降に参考にしていきたい。

今回の根っこの問題点は「デッキ完成が速すぎる」という点だ。

デッキ構築は新規で有効なカードを追加したり、デッキから不要なカードを廃棄したりすることで理想的なデッキの完成を求めていく楽しさがある。これが速すぎてしまうとデッキ完成の強大な力で回す作業ゲーになってしまい、物足りなさを感じてしまうのだ。人間は未来が広がると思っているときが実は一番楽しくて、実際に獲得してしまうと飽きてしまうものなのだ。これは食べ放題を食べすぎてしまったり、ソシャゲで強いカードを獲得しきってしまうと、その後飽きてしまう現象で同じ体験をした人も多いのではないか。

デッキ完成が速すぎる原因はいくつかある。

一つはいくつかの理想デッキにおいて必要なカードパーツが2~3枚しかない点だ。もっとコンボに必要なカードの枚数を増やすとか、せめて同じカードを複数枚持っていないと効力がないカードをもっと増やして必要なカードパーツ数を増やすべきだったと思う。デッキの完成が速すぎて、デッキ3~4枚を序盤に早々にくみ上げて後は無双して終わるだけのパターンをいくつか確認した。

もう一つは初期デッキが6枚と少なすぎて、不要な初期カードの廃棄が簡単すぎる点だ。今から初期デッキを10枚にするのはユーザーにとってストレスなはずなので、これは次回作での改善点になる。

このゲームは初期デッキをいくつかのパターンから選択できるが、そのデッキに1~2枚のカードパーツを揃えてしまえばデッキが完成してしまうので、次回はこの課題を解決する方向で向き合いたい。

カードピック運要素が強い

この運ゲー要素が強いのは織り込み済みである。実力重視でカードピック出来るようにしてしまうと、一つ上で書いた理想のデッキ完成が異常に早くなるだけで、間違いなく面白くなくなる。ローグライトにおいては、敵の強さをそれを前提に増やしていく調整になるため、非常に窮屈なゲーム性になるだろう。運要素で入手できる喜びには、その前に不運にもカードが手に入らないストレスが必要になる。投げ出すほどにストレスを与えてはいけないので、この調整が難しいのだが。

もうちょっと実力値を増やそうとするならば、お金の概念を追加してカードを価格制にするとか、お金払ってカードピックをリフレッシュして再展示させるのが良いと思われる。これはキングオブモンスターなどのボードゲームやBalatroなどのゲームで行われている手法であり、非常に有効な手法と推察している。

デッキ構築ローグライトゲームだけでは集客が難しくなってきた

はるか昔、当時大学生だった私が2012年にFLASHゲームとして公開した「カードの不思議なダンジョン」というゲームは、当時デッキ構築などという言葉自体が物珍しいこともあってゲーム性だけでだいぶウケてバズっていた。現在はFLASHは非推奨となってしまったため、2016年にJavaScriptで書き直したものが以下の黄泉からの帰還である。これもまた、デッキ構築ローグライトが新鮮であったためにウケた。

・黄泉からの帰還

https://hothukurou.com/game/HTMLCard/index.html

だが、2017年に発売されたSlayTheSpire以降、あまりにもデッキ構築もローグライトも量産されてしまい、このゲームシステムだけでは訴求力が無くなってきたのではないかと思う。

その証拠として、この勇者ネコの公開時のインプレッションよりも、先に紹介した格闘リバーシの方がその斬新さから3倍以上の差をつけてSNS上で拡散されていた。

まあ時代の流れなのだろうと思う。似たようなシステムのゲームはたくさんあるので、次回作を作るとすれば「デッキ構築ローグライト以外にユーザーの好奇心に訴求できる仕組み」を作らなければならないだろう。それがゲームシステムなのか、それともシナリオやイラストなのかはまだ考えていない。

まとめ

以上で勇者ネコのデッキダンジョン作成までのふりかえり考察を終える。

6日で作った割には今作は相当デッキ構築ローグライトっぽさができたのではないかと思う。

今後は、「レリックなどのカードとは異なる強化要素の追加」を行い、より多様なデッキビルドができるデッキ構築ローグライトの製作を行っていきたい。

ちなみに次回作はデッキ構築ではなく「長身ギザ歯ゲーム制作少女が作ったデスゲームチンチロに参加するゲーム」を公開予定なので首を長くして待っていてほしい。11月中に公開予定である。