24時間で経済シミュレーションゲーム作った時に悩んだ話

概要

人生の時間は短い。短すぎて目が覚めたら棺桶の中にいました位の速度で日常が過ぎ去っていく昨今ですがみなさんいかがお過ごしでしょうか。そんな毎日を豊かにするためにも1日で1本ゲーム作っていくのが最も人生のクオリティが高いのではないかとわたくしは睨んでおります。

今回は、あほげーという1日でゲーム制作イベントで経済シミュレーションゲームを作った時の話をします。

・あほげー

https://ahoge.info/

ゲームというのは、面白くすることがとても難しいジャンルでありまして、まさしくシュレディンガーの猫のように開けてみるまで評判は分かりません。企画書の上では面白そうでも実際に遊んで面白い確率が10%程度しかないのがゲーム制作ですが、それを逆手にとって1日1本仕上げて10%の宝くじを引いて引いて引きまくるのがよいのではないか、ということであります。

ただ、普段はもっと長い制作期間で作り上げるゲームを24時間に落とし込むわけなので、その「面白くないゲームをいかに面白くするか」という悩みや苦痛も濃縮されることになります。1億年ボタンみたいな話ですね。そんな地獄の蒸留酒の製造過程をぜひ文章を通して再体験していただければと思います。

どんなテーマを見ても経済シミュレーションを作るつもりだった

あほげーは毎日当日にお題が発表され、それに基づいてゲームを作っていきます。

今回のお題は「にんにく」でした。それを見た瞬間、「よし、にんにくを売買するゲーム作ろう」と決心したのでした。どんなテーマが来ても経済シミュレーションゲームを作るつもりだったのです。これは大喜利のテクニックを応用した思考法であります。

 

そこで大喜利のやり方をYouTubeで見ているのですが、それによると「お題を自分の領域に引き込んでいくこと」がコツとのこと。ドラゴンボールのコスプレをした人がドラゴンボールに絡めた回答で大喜利に答えるみたいな話ですね。ゲームジャムにおけるお題も大喜利みたいなものなので、この手法を用いたわけです。あほげーの会長もきっと許してくれることでしょう。

ところで、みなさんは最近の課題は何かお持ちですか。学生さんだったら勉強の成績上げたいとか、社会人2~3年目だったら、職場のあの子と仲良くなりたいとか、人生における課題は生き続ける限りずっと芽生えていくものですね。というかこれは煩悩ですね。

さて私は「商品を売買して差額で儲けるゲーム作りたいなあ」と思っておりました。というのも最近は時間に余裕ができた関係でボードゲームを高頻度で遊んでいるのですが、いわゆる経済シミュレーションを題材としたボードゲームがとても面白かったからであります。

例えば、中国やインドから茶葉やシルクなど4種類の商品を購入して、本国で売りさばく「東インド会社」はシンプルながら非常に戦略的で面白いゲームシステムで最高でした。

「供給が多ければ多いほど安く買える」というシステムと「本国での供給が少ないほど高く売れる」という現実の経済でも起こりうる事象をゲームに落とし込んだ点がお見事でした。

例えば生産地に商品が10個あるときは2Gで購入できますが、これが残り5個になると4G必要になったりします。こんな塩梅で、数の多い商品を安く買うことができます。

また、本国で売り払う時は商品が出回りすぎると売却価格が減ってしまうという問題が起こります。なので同じ商品ばかり売り続けても儲かりません。この塩梅が難しいところです。

「現在どの商品が一番儲かるのか、需要と供給によって変化する」ので、他プレイヤーとバッティングしないようにしたり、バッティングするならば相手よりも早い船で先に買って売ることで先行者利益を得るということができるという、非常に読みあいが強い点がとても面白かったのです。

こういうゲームを一人用ゲームで遊べるようにしたいなあ、と最近はずっと考えていました。

そこで、あほげー開催前の2日くらいでプロトタイプを作って遊べるようにして気が付きました。

「これ、一人用ゲームにすると面白するのかなり難しくないか・・・!」と。

そんな悩みの中であほげーが開催されたので、「一人用経済シミュレーションをいかにして成立させるか」というのは参議院選挙と同じくらい重要な関心課題だったわけです。

作業開始してから完成まで7時間 作業開始するまでが長い!

あほげーが開催された21:00からは、頭の中で大まかな企画を練っていました。

そして寝ました。8時間しっかり寝て、起きて、選挙の期日前投票に行ったり、帰りにラーメン食べていたら12:00になっていました。時間の流れとは早いものですなあ。

慌てて頭の中の企画を文章にして「これ面白いか?」とにらめっこする作業が始まりました。これがゲーム制作の核であり、もっとも不安で苦しい地獄の時間でもあります。

今回想定している経済シミュレーションゲームは、「生産地と売却地が物理的距離がある状況で、生産地で安く買って売却地で高く売るゲーム」となります。これ単体で面白いのか????一人プレイだと他プレイヤーの干渉ないけど大丈夫???と悩みつつ要素の取捨選択に勤しみます。

色々考えた末に、「RPGマップを用意して、辺境の村でにんにくを仕入れて王都で売ろう。辺境の村のにんにく量は限界があり、量が少ないと販売価格が上がるから、遠い村にも向かう必要がでてくる」というアイデアを思いつきました。

当時の決意表明動画を残したのでご覧ください。

ここまでアイデアが決まり、おぼろげながらも勝算がみえてきたら後は実装するだけになります。

まずは背景マップを作ります。

マップができたら、そこにプレイヤーが歩けるようにします。

プレイヤーは画面真ん中固定にして、マップがむしろ動くようにします。

そうすると、画面がスクロールするので、マップの中を動いているように見えます。

にんにくを売買するゲームなので、それがわかるような画面配置にしていきます。

画面上にはお金とニンニク量を用意します。

ニンニクは可搬量があり、一度に多くは買えなくなっています。お金を払うと可搬量が増えたり、移動速度が増えたり、にんにくの売却価格を増やしたりできます。

にんにくを購入する村や、売却する城には「にんにくがいくらで売れる・買えるのか」を見やすくマップ上に表示しています。

残りにんにく量に応じて価格は決まるので、多くのにんにくが残されている村を訪問して売買していく戦略が求められるようにしました。

ともあれ、無事に想定しているゲームが全部完成しました。あとはゲームバランスを整えて19:00に無事に公開することができました。実際に遊んでちゃんと意図通りに面白かった時は一安心しました。

報われる瞬間です。8時間あれば人間なんでもできますね。

・にんにく行商人

https://hothukurou.com/game/Onion/index.html

バグ発生!!

19:00に無事に公開したので、そのままリアル脱出ゲームイベントに参加するために電車に飛び乗りました。ゲームを公開するだけで飽き足らず、イベントに参加して休日の幸せをしゃぶりつくそうという魂胆です。

しかし電車の中でDMが届きました。いわく「タイトルボタン押してもゲーム始まらないんだけど・・・」とのこと。調べてみると、確かにスマホからだと操作できない。

ああ、やらかしました。PCからだとクリックで反応するけどスマホのタッチ操作が効かない・・・。

Webエンジニアの方ならピンとくるでしょう。そうです。PCしか動作しないonClickイベントでクリックイベントを実装していたのです・・・!

原因は、ボタンモジュールをリニューアルするため、AIにボタンモジュールを作らせたことにあります。

完全にやらかしました。そのまま逆方向の電車に飛び乗ることも考えたのですが、せっかくリアル脱出ゲームイベントにお金払ったのにこれに参加しないのはもったいないと思い、やむなくバグは放置して遊んできました。気が気でなかったため無事に脱出失敗。そのまま帰宅後、5分で原因確認してバグ修正して、動作確認版をリリースしたのでした。

まとめと振り返り

以上があほげーという24時間ゲーム制作イベントでゲームを公開した経緯となります。

今回制作したにんにく売買ゲーム、正直一人で遊んでもしっかり面白い出来になったのではないでしょうか。

村と城の往復作業という単調作業を彩るパワーアップ要素。このパワーアップ要素により往復作業はさらに効率的に行えるようになり、成長を実感できます。成長の実感はゲームを面白くしますね。

そして、ただ同じ村を探索していては村のにんにくがなくなってしまうので、遠くに買い付けに行ったり、その効率化のために、可搬量を上げたり速度を上げたりします。

また、にんにくの売却価格だけを上げて近隣の村だけで往復して販売していくプレイもできるでしょう。このように「シンプルなのに戦略が複数あるゲーム」というのは奥深いゲームと言われます。

1日で作ったにしてはかなり面白くなったと思うのですがどうでしょうか。

もちろん、これを2~3時間遊べるゲームに進化させるのは結構壁がありそうな気がしますがね・・・!