難しくて面白いゲームを目指した「ダンジョンボンバー」の振り返りとクリア率集計

繰り返し遊べるゲームを作りたい

ゲームを作る一つの目標として「繰り返し遊べる面白いゲームを作りたい」というものがあります。

ローグライクゲームのような、「難しいんだけど、繰り返し遊ぶことでプレイヤースキルが高くなって、結果的にクリアできるようになる」ゲーム。そんなゲームに久しぶりに取り組んでみようと試みたのが本作です。ゲーム性重視して、イラストはレトロ調。この記事のサムネイルのような美少女が出てこない大変硬派なゲームとなっております。今回はその意図についても書いていきます。

https://hothukurou.com/game/BombRPG/index.html

初心にかえろう

面白いゲーム性を構築することは、ゲーム制作者ならみんな思うであろう目標ですが、一方でこのゲーム性という要素は広告宣伝の際に話題性にしづらいため、優先度が二の次になりがちという問題があります。

ゲームは遊ばれてなんぼです。ゲームをプレイしてもらうためにはゲームを遊んでもらうための宣伝というフェーズが入るのですが、「爆弾を連鎖して敵を倒すゲーム!」というゲーム性を宣伝しても正直面白さが伝わりづらいのです。

ゲームを長く作っていると、徐々に「面白いゲーム」から「面白そうなゲーム」へと思考がシフトしてしまうのです。自分がそうでした。

これは、人にゲームを薦める時に特に気が付くことですが「一言で面白さを説明できるゲーム」はとても訴求力があるのです。エンタメを生業としている方々はこの点とても気にしているとは思うのですが。

とても魅力的なイラストも似たような効果はあります。特定のフェチシズムを刺激する美男 or 美少女が出てくるゲームはついつい遊んでみたくなってしまうものです。

自分も2022年夏くらいには、この美少女とホラーシナリオで人を惹きつける方法を試みています。

例えば「怖いおばけも可愛くしたら問題ないよね!」はその一例です。

ホラーだけど、可愛くするコメディ差が面白そうだ!と一目でわかるタイトルですね。

https://hothukurou.com/game/ObakeGirl1/index.html

ラノベみたいと思った方はご明察。全く同じ手法を使っています。

一言で面白さを説明した要約文」をログラインと呼ぶのですが、最近のライトノベルはこのログラインをタイトルに入れることで背表紙に書かれたタイトルから面白さを伝えるように進化しているのです。

その方法を自分も使っています。タイトルからゲーム内容がわかるようにして、面白さを伝えようという試みです。

ただ、思ったよりもあんまり話題にならなかったのでこの「面白そう」作戦はうまくいかなかったのだと思います。

たぶん自分の元来のエンジニア的なスキル特性はこの方向性の「面白そう」を高める思考は得意でないのかもしれません。

ということで、ここは基本に立ち返ってしっかりゲーム性で攻めてみることにしました。

しかも逆張りです。RPG+パズルゲームを軸にして、ルールが理解できないと面白くないゲームを作ることにしました。

実際、今作はゲーム画面を見ても「ゲーム性がわからないので面白さは伝わらない」となると思います。

最近のおしゃれなソシャゲのデザインと比較しても「一昔前のデザイン!!」となるでしょう。

なんならシナリオもないです。あるのはマップのみ!ゲーム性一本で勝負!

ただ、この「ヴィジュアル△でシナリオも美少女もないゲーム」状態でもゲーム性を追求したらワンチャン行けるんじゃないかと思ったので本作を制作しました。

こう書くとめっちゃ綱渡りな作戦です。たぶん商業で買い切り型のアプリで売ったらほとんど売れない作戦だと思います!マネしないように!

これは自分のような「副業としてお気楽にゲーム制作事業を長い期間やっている人間のみが可能な作戦」だと思います。

これがゲーム会社だったら自分は間違いなくタイトルに美少女を入れると思います!だってその方が目に入るでしょ。

キャラクタごとに使用ボムや初期ステータスが異なっていて、基本キャラ以外はガチャで開放するようにすれば商業的にも完璧でしょう!

例えばこんな風に!

まあ、今回はやってないですけどね!いつかやるかもしれないけど!

ただ今回は、こういう「近代におけるゲームの最適解」に収束せずにあえて一昔前のオールドスタイルデザインで戦ってみることにしました。これにはちゃんと理由があります。

ダサい方が遊びやすい?

今回得た知見の中で非常に有益なものとして「キレイなデザインよりも、古いデザインの方がとっつきやすいんじゃないか?」というものがあります。

その背景として、こんな出来事がありました。

ステージマップ制作の時に、ステージデザインをmid journey(AI絵描き)で制作した五種類の塔イラストを流用して作ろうとしたときのことです。

こんなツイートをしました。

AIが描いてくれた精緻なイラストを並べてみたところ、背景とかステージを結ぶ線がシンプルすぎて、5つの塔がコラ画像みたいに見えてしまって、ちょっとダサい感じになってしまったのです。

で、これの修正をどうしようかツイートしたところ、たくさんの反響がありました。

こういう「わかりやすいたたき台を一人ひとりが技術を使って修正すること」はとても楽しいことです。実際自分もそういう技術の高めあい見たいなものは好きなので、ちょうどよい題材だなと思っていました。

背景がスカスカなのが問題だから、線を足跡に変えたり、テキストの外側に光彩つけたりするといいよ!」みたいなツイートをたくさんいただいたので参考にしようと思っていたのですが、「何かひっかかり」みたいなものがありました。

で、このひっかかりは後日思わぬ方向で謎が解けることになります。

自分のゲームをよく遊んでくれる人からのアドバイス後日聞くことになるのです。

コンシューマのゲーム作りたいわけじゃないでしょ?正直、元の作っちゃうおじさんの絵が一番ワクワクするし、求めているゲーム性にあってると思うよ。

まったくもって意外な回答でした。つまり、「洒落たデザインよりも、親しみのあるほどよいダサいデザインの方が良い」ということです。これは確かに思い当たる節があります。

商業レベルのととのったデザインのゲームを遊びたいならみんな商業大作ゲームで遊んでいるだろ、ということです。そもそもそういうゲームを求めている層はターゲット層ではないのです。

自分が求めているのはそういう方向性ではなく、もっと手が届く範囲の、学校のパソコン室でみんなで遊ぶような、そんなゲームを遊んでくれる層がターゲット層だったのです。そういう層は、最初に私が提示した位のマップが一番身近で親しみを持ってくれていたのです。

大事なのは、「ターゲット層はだれなのか」を明確にすることです。世間全体をターゲット層にすると薄味になって本当に遊んでくれるターゲット層への訴求力は落ちてしまうということです。

ターゲット層ではない人の意見を聞いても、その人が遊んでくれないのならば意味がない」ということでしょう。その人が属する集団を引っ張ることができれば意見を取り入れるメリットはありますが、今回のようなステージマップデザインというほんの一要素程度の取り組みではかなり難しいことかと思います。

自分のゲームが好きな人から感想を聞くのが良いという、どこかで聞いたことがある普遍的な結論になりました。

まあ、最終的なデザインはひっくり返って、結局こんな感じのデザインに落ち着いたんですけどね!やっぱコラ画像見たく見えるのは嫌なので!!ちゃんちゃん!!

ファンであるターゲット層からの意見は8割聞いた方がよいですが、最後は作者の自意識を信じた方が良いと思っています。その方がファンも知らない新しい刺激になって面白いからね!!ついてこれる人こそがファンなのだ!!

難易度調整は高いままにした

今回のゲーム難易度はかなり高い位置に設定しました。

いつもは「最後まで遊んで楽しんでもらいたい」という意思が優先してしまって、どうしても難易度を下げることでゲームの調整をしていました。ゲームは勝てば楽しくて負けたら悔しいものです。これは子供はすごろくなどの勝負事に負けるとギャン泣きすることが多いことからも普遍的なもののようです。あと、ストーリーを入れたゲームが多かったので、最後までストーリーを楽しんでほしかったという事情もあります。

楽しいゲーム体験を味わってもらうために今までは難易度を下げていましたが、本作はコンセプトとして「難しいけど、繰り返し遊べる面白いゲーム」を目指したので難易度はあくまでこのままにしました。ストーリーもないので、今回は難易度低下はしないことにします。負けた後の経験からプレイヤーとしての経験値を上げ、勝つ方法を見出して勝ってほしいからです。そういうゲームの楽しみ方が本作で推奨する方法です。

今作では取り入れないですが、次回作でもっと大規模にすることがあれば「再プレイ時に前回の結果に基づいてスキルアップが行える」方式を入れると思います。今回のようなダンジョンがいくつもあって、プレイ時間合計で10時間必要です!みたいな大風呂敷にしたら考えていくでしょう。

ということで、この後発表するクリア率は相当に低いものと想像します。果たして!

ゲームのクリア率集計!

いつもならば「ステージクリア時点での生存率を、ユーザーごとに測定」という方法で計測していました。これは「ユーザーが一度ゲームオーバーになっても、その後クリアすればゲームオーバー人数にはカウントせず、クリアとして人数加算する」という方法です。これは、クリアまで見た人の割合を計算するときに使う方法です。

今回は計測方法をミスってしまった都合で「ゲーム終了時の到達ステージ数」を計算しました。

これは、「ステージ1で9回負けた後に完全クリアした場合は、ステージ1に9加算して、完全クリアにも1加算する」という計算方法です。プレイ回数だけ数字が増えるんですね。

さて、ゲーム終了地点での到達ステージ数はどうなったでしょうか。2022年11/6(土) 0:00~24:00の集計データ1735回分の集計結果はこちらです。

割合をみるために円グラフにしました。
まあ、序盤のステージ1で半分近くのプレイヤーが敗退しています。

一方で、完全クリア率は4.84%と、総プレイ数から見たら十分に高いように見えます。

作者でも負けることがある結構な難易度にも関わらず、完全クリア率4.84%ならばプレイ10回以内にクリアできる人は39%いることになりますからね。

興味深いのはステージ3以降でのゲームオーバー率が極端に低いことです。このゲームは後半になると爆発範囲が大きい強力な爆弾を入手することができるので、負ける可能性が低くなることが原因なのだと思います。

序盤に苦労しながらパラメータを上げていって、後半で強力な爆弾で一気に連鎖を決めていく爽快感は本作の魅力的なポイントであります。

それが如実に表れた結果となりました。

次に「2022年11/6(土) 0:00~24:00内でのゲームオーバー時の総獲得金額」をグラフにしました。こちらです。

ちなみにこの集計期間での最多総獲得金額は6031Gでした。

クリアまでに爆発するブロック数は決まっているので、ここまで稼ぐのはGOLD BLOCKの出現率を上げるとか、コンボ数を増やすような工夫が必要になります。

グラフ上には2つの集団が見えます。一つは、序盤の1000G未満で負けてしまった集団。もう一つはクリアしたときの総獲得金額である4800G付近に集まっている集団です。

このゲーム、油断するとすぐに魔物に責められて負けてしまうので序盤の負け率が多いのだと思います。もう少し救済措置があればと思う一方で、手軽に何度もプレイできるのだから問題ないだろうという気もします。序盤で負ける分には1プレイ5分とかからないはずなので、再プレイもしやすいでしょう。

まとめ

以上は、ダンジョンボンバーの振り返りとプレイデータ集計となります。

このゲームは想像以上にプレイ数が集まっており、公開後のプレイ数は歴代1位になりそうな気がしています。やはり自分は「繰り返し遊べるローグライト的ゲーム性の構築」に適正があるのでしょう。

実際自分もそういうゲームが好きなので。というか、パラメータをアップしながらゲームを有利に立ち回る楽しさを軸としたジャンルに「ローグライト」というジャンル名が付いていたことが今回非常に宣伝としてありがたかったです。今回、魅力的なシナリオもヴィジュアルもない中で、ローグライトパズルゲームというジャンルの看板があったおかげで、ゲームの楽しさを効率的に伝えることができたのではないかと思っています。

正直、ローグライトという名前が流行りだした当初は「なんでローグライクみたいな造語ができたんだろう」と思っていたのですが、この方向性はそのまんま自分が求めている方向性そのままで、それを共通言語として6文字で表せることはゲームの魅力を伝える宣伝しやすさからみて、非常にありがたいことです。

今後も、このローグライトゲームを様々なゲーム性で作っていきたいので、今後ともよろしくお願いします。

https://hothukurou.com/game/BombRPG/index.html

・・・もしかしたら次回作はこんな美少女ゲームになっているかもしれませんが、それは自分のターゲット層の人の感触を見て決めたいと思います!