概要
この記事は新技を覚えて敵を倒していく「技ひらめきクエスト」をいかに面白くしていったかを振り返る記事である。
ロマサガやらサガフロみたいに、強敵との戦闘中に新技閃いたら面白いでしょ!!!それ無限プチプチのように永遠に遊べるようにしよう!きっと面白いはず!!!と思ったら案外面白くならなかったので、どのようにゲームデザインを改善していったのかを残す。
・技ひらめきクエスト
https://hothukurou.com/game/Hirameki/index.html
3分ゲーコンテスト用に企画した
3分ゲーコンテストとは、2004年からはじまったフリーゲーム制作者が3分をテーマにしたゲームを制作してランキング形式で競わせるコンテストである。主催者が変わっていったことでその形を変えてはいるが、過去には「何度も遊ぶと話がホラーへ急展開するパズルゲームである愛と勇気とかしわもち」や「エンディングロールを破壊してスコアを競うもしくはタッフロール」など、2000年代のフリーゲーム愛好者なら一度は聞いたことがあるであろう名作が出展されていた。制作者のジャンルや畑の幅は広いことも特徴の一つである。
・3分ゲー
https://3punge.wixsite.com/3punge
・3分ゲーコンテスト解説記事(2010年までのまとめ)
私も中高生のころにここで公開された作品をキャッキャと楽しく遊んでいた。遠く年月が経った現在は公開する側に回っている。一時はアクセス数界も減少傾向だったようだが、最近はこのコンテストにより作家性を育みsteamやその他界隈で活躍されている方も出てきたことからアクセス数が急増しており、お笑いでいう大宮吉本のようなゲーム制作界の下克上を虎視眈々と狙うゲーム制作者の将来性を育むコンテストとなっている。
さて、今回はかねてより考えていた「技をとにかく閃いていくゲーム」を制作することにした。ゲームを遊んだ人なら共感できるだろうが、新技を覚えるのはとにかく楽しいものだ。これがずっと続くのだから、さぞ面白いゲームになるだろうと胸を膨らませながら制作に臨んだ。
実際「技を無限に閃くことができるゲーム作ってます!!!」と書くと結構インプレッションが高くなる。以前から「Xで告知した時のインプレッション数を見ればそのゲームに需要があるかわかる」と思っていたのだが、実際ありそうである。が、実際にテストプレイしてもらった段階でいくつか問題が浮き彫りになった。
成長感ないと飽きる←これの解決法
どんなに楽しいことでも何十回を繰り返すとさすがに飽きてしまうのだ。
本作は「ルーレットで技を決める。同じ技を3回発動すると新技を閃く」というシステムだ。このシステムだと、だんだん使う技が増えていくので新技を閃きにくくなるので難易度調整にちょうど良いと思っていた。
最初期バージョンでは常に初期技はパンチ・キック・体当たりの3つから始めるようにしていたがこれが不評であった。成長感がないのだ。
常に初期技が決まっていて、閃いて強くなるしかないというのはだんだん飽きてしまうのだ。
覚えた技はスキルマップに残り、次回からはその技を閃く。もし弱い技を閃いてしまったらゲームオーバー時に削除することができるという仕様も、ゲームオーバー繰り返さないとクリアできないし、覚えた技を削除するだけでは成長した感を感じないのだ。
以下ポストではゲームオーバー後のスキルマップ編集画面を作っているのだが、このシステムはつまらなかったので全ボツとなった。1日丸々無駄にした。
さて、成長感を持たせるためには前回覚えた一番強い技を次回最初から使えるようにする ことが一番手っ取り早そうである。ということでゲームオーバー時には次に使える技を選べるようにする機能を追加した。
これで成長感はしっかり提供できるようになったはずだ。
技を覚えることに飽きる←これの解決法
次のつまらないポイントとしては「技を覚える行為に飽きる」という問題である。
技の種類を14種類ほど作っていたのだが、これだと少なすぎて同じような技が増えてしまうことと、技の種類を増やしてもそこまで面白さに影響しないことがわかってしまった。
これを深堀りしていった時にあるアイデアがひらめいた。
たくさんの効果を持つカードゲームがなぜ楽しいのか、それは「一枚のカードだけでは強くはないが、カード間にシナジーがあり、複数のカードを組み合わせて使うことが面白い」ということである。私はRPGで使う技ばかり考えていたので、技にシナジーをつけるという発想がなかったのだ。
ということで、「カラ、ア、ゲの3つの技を覚えると超ダメージ」という技や「毒状態だと大ダメージ」という新技を追加した。コンボできそうな技を覚えると、ついつい技構成を変えて試してみたくなるものであるから、これは結構よい効果があった。また「リールにある技数が多いと大ダメージ」というものもあり、技数が多くて弱い技が邪魔になる後半戦にこそ輝く技を用意しており、これもシナジーの一つかと思う。
また、単純にユニークなレア技も作成した。「強い技3つだけ残して後の技を消す」「スロットリールを遅くする」「2回までは完全防御できる唐揚げシールドを展開する」技はある程度強くなってから特定の技からのみひらめくようにしている。普段覚える技とは異なる効果であるから、ワクワク感が増えたようだ。
実力感ないと飽きる←これの解決法
最後の問題として「スロットだと運ゲーで飽きる」という問題があった。
運ゲーでクリックを盲目的にする仕様であったのでこれは致し方ないのだが、よく考えてみるとお店で遊ぶスロットには「目押しができる」という実力感ある要素があることに気が付いた。
ということで、スロットの速さを目押しができる程度に遅くして、次閃く技はオレンジ色、新たに閃いた技は先頭に☆をつけることにした。
これはだいぶ実力要素が大きくなる変更であり、目押しを頑張ろうとついついハマれる要素になったはずである。
また、さらなる実力感を提供するために、閃く技をスロットで表示して、目押しで決定できるようにした。実は技名から技の効果を推測することができるので、これで実力要素は更に大きくなったはずである。
と、上記の改善を年末年始に行っていたら当初のポチポチ運ゲーから「目押しで強い技を閃くゲーム」へと変貌を遂げることができた。書いてしまえば課題と解決は明確であるが、この課題発見と解決までの思考の逡巡は大変であった。ゲーム制作の難しさは面白くないプロトタイプを面白くする方法を発見することにあるのかもしれない。
まとめ
以上で技ひらめきクエストを面白くするための試行錯誤を終える。
まとめると以下の改善を行った。
(1)毎回初期値に戻ると成長感を感じない→覚えた技から自分で次回初期技を決められるように変更
(2)技を覚えることに飽きる→技数を増やすとともに、技のシナジーを追加、レア技の追加
(3)運ゲーで飽きる→目押し可能な速さへ、次使いたい技は色などで強調、新技もスロットで目押し可能
結果テストプレイでは批評的だったコメントもだいぶ好評に転じてきたので一安心である。これからもゲーム制作では同じような問題が発生するだろうが、その課題と解決策を考えて記事として残していく。
・技ひらめきクエスト