モンスター軍団を作ろう!ゲームの狙いとバランス調整方法について

この記事は自由にモンスター軍団を組んで戦わせるゲームの振り返り記事である。

一度遊んでからこの記事を読むともっと面白くなるよ!

モンスター軍団を作ろう

非同期対人戦って気楽でいいよね

今回のゲームは「データベースに登録された他プレイヤーのモンスター軍団と対戦する」というゲームである。対人戦がメインなので胸を張ってオンラインゲームと言っていい気がするのだが、実際に戦うのは過去のデータであり、リアルタイムに同期して戦う訳ではないのでちょっと趣向が違う気もしている。

ただ、リアルタイムに他プレイヤーとマッチングして戦うようなオンラインゲームと違って、本作の対人戦は対戦相手の都合を気にする必要がない気楽さがある。そういうゆるい対人対戦ゲームを作りたくて本作を制作した。

このようなデータベースを用いたコミュニケーションは、結構需要があるゲーム要素だと思っている。

例えばフロムソフトウェアのデモンズソウルやダークソウルシリーズでは「ダンジョン内に文字を残して他プレイヤーとダンジョンの情報を共有できるゆるいインタラクション」があるのだが、これが結構好評だったりする。

このゆるいオンラインゲームは過去作でも制作しており、一定の需要はあった。そのゲームの名前は宇宙遊泳セラピーといい、これは「他プレイヤーが力尽きると、死骸になるが、この死骸が回復スポットとなり、より遠くに移動できる協力型宇宙探索ゲーム」である。人はさびしさに他人を求めることがあるが、一方で他人を意識して過ごすことにはストレスを感じるものだ。非同期オンラインゲームは他人を意識せずに他人に触れあえる、いいとこどりをしたゲームであり、だからこそ需要があるのだろう。

・宇宙遊泳セラピー

https://hothukurou.com/game/Space/index.html

ちなみに2000年代にCGIゲームという、データベースに他プレイヤーの情報を保存して戦わせたり、交流したりするオンラインゲームがあった。現在ではもっと高性能なゲームが増えてきたため、現在ではほとんど見られないが、今でも遊びたいなあという声も聞く。ということは、作るっきゃないでしょ!!

ということで、急いでモンスター軍団を戦わせるゲームパートとプレイヤーのモンスターデータを保存する仕組みを実装して公開したのが本作である。みんなモンスター集めて戦わせるの好きだろうから、まあうまくいくだろうなとは思っていた。

バランス調整の仕組みを構築

本作は合計44種類のモンスターを限られたコストで雇って軍団を結成するゲームである。モンスターには効果を持つものも多く、これによりシナジーが発生して強い組み合わせが生まれる。例えば、遠距離攻撃できるモンスターと、敵の移動速度を下げるモンスターを組み合わせると、鈍足になった敵モンスターを一方的に遠距離攻撃できて強い、みたいな話だ。カードゲームのコンボ的なことができるのはゲームとしてとても面白い要素なので、このシナジー要素については結構注力したつもりだ。

一方で、こういったシナジー要素を考えるとバランス調整は複雑になる。これを考慮したバランス調整法が必要になる。

本ゲームのバランス調整法としては、まず指定した区間のプレイヤー対戦データを全部抽出してスプレットシートにまとめる。ここから、モンスターの採用率と、そのモンスターを採用した時の勝率を確認して、2~3勝以上勝ち越している割合を算出した。

以下は23/07/22~7/29のモンスター使用率データだ。勝率の高いスカルサンタとゴーストの組み合わせが強く、勝率が抜きんでている。この二体はシナジーがあるから、どちらかを修正すればもう片方の勝率も落ちるだろう。スカルサンタはランダムな方向に回復する弾を高速発射するのだが、ゴーストは自軍のモンスターを中央に集めるスキルを持つため、スカルサンタの回復弾が中央に固まった自軍に当たりやすくなり、勝率が高くなったと考えられる。

そこで今回のバランス調整は出現数自体は高くはないが勝率の高いスカルサンタの修正対応しつつ、あまり勝率が高くなかったり、出現数が低いモンスターの能力を上げる対応を行った。スカルサンタさえ修正すればゴーストの使用率も落ちるため、ゴースト自体はそのままにした。

ちなみパラメータ設定は専用のスプレットシートで行っている。ここで書いたデータをマクロでJavaScriptの連想配列型のデータに出力するようにしている。このマクロはChatGPTに作ってもらった。ホントにChatGPTめちゃくちゃ便利!!!仕様書いたらほぼ正解を出力してくれるので、これはしばらく手放せませんね・・・。

モンスターバランス調整の歴史

最後に、このゲームでのバランス調整の歴史を確認していこう。

7/3~7/5 リリース直後

スカルナイト、金スライム、ホブゴブリン、カボチャナイト、サイクロプスの勝率がとても高い。

スカルナイトは魔法無効スキルがあるので、魔術カボチャの遠距離攻撃を防ぐことができる点でとても使われていた。金スライムは大量に配置しておくと高確率で敵を全滅させることができる。

修正は金スライムとスカルナイトの下方修正を行った。また、あまりにも使われなかったモンスターに上方修正を行い、新規で4体のモンスター追加を行った。ここで、グリーンフードというモンスターのコスト値を落としたことで環境は一変する・・・!

7/6~7/9

前回影を潜めていたグリーンフードが一気に環境トップに躍り出た。前回ほとんど使われなかったのがウソみたいである。

このグリーンフードは、敵軍を自分の周りにワープさせる効果があるので、これを用いた後にホブゴブリンで囲ってボコボコにする戦法が非常に流行っていた。

使用率は少ないのだが、あんまりにも強すぎたのでグリーンフードのワープ効果を2体までに限定させてバランス調整を行った。また、ブルーフードは「自軍を自分の周りにワープさせる」ことができるのだが、これはダークスカルの「自軍を1体敵軍にする」という効果を使うと、敵軍をワープさせるグリーンフードと同じ効果が発揮されてしまうので、こちらも目覚め時間を遅らせる修正を行った。ブルーフード+ダークスカルで予想外に強いコンボが生まれてしまった結果となる。そのうち他の強力なコンボが台頭してきたらこのコンボだけでも戻したいところだ。

7/10~7/16

一見すると勝率の分布が良い感じに平坦に見えるのだが、実際は金スライム+サイクロプスのコンボが異常に強く、この二体の勝率が抜きんでて高い状態になっていた。

金スライムはHPが1なのだが、最速で敵陣を攻撃できるので、これで敵軍を半壊させて、その後でサイクロプスが残党狩りを行う。本来サイクロプスは敵味方関係なく攻撃するマイナススキル持ちなのだが、他に味方がいなければ関係ないので、その強力範囲攻撃で敵軍をバッタバッタとなぎ倒していく。

また、ゴースト+暴発カボチャのコンボも脅威だった。暴発カボチャは自爆しながらランダムに弾を放出するモンスターで、ゴーストによって中央に移動してから爆発すると非常に強力に敵をなぎ倒すことができた。

この二つのコンボを用いたパーティが当時かなり多く、攻撃された方はあまり良いゲーム体験ができていなかったようなので、金スライムと暴発カボチャに下方修正を加えた。また、敵を倒すと分裂するトナカイ?のコストを下げたことで金スライム対策に使えるようにした。以前から金スライムの勝率が高く、何度か下方修正をしていたのだが、この修正によりようやく金スライムの勝率が落ち着くことになった。

~7/22

当時は時間がなかったのでエクセル集計をしていなかったのだが、金スライムが落ち着いたことで今度はマミーキングが環境を席巻するようになった。

マミーキングは、遠距離攻撃無効のマミーを一定時間ごとに生成していく。魔術カボチャでは倒せないため、長期戦で有利であった。また、敵を倒すと成長するレッドデビルや、敵を倒すと分裂するトナカイ?などのレベルアップするモンスターもそこまで強くなかったことが原因となる。

この日行った修正では「遠距離攻撃無効のキャラをターゲットに遠距離攻撃しない」「回復キャラが動きやすいように、満タンのキャラは回復弾をスルーする」といった修正を加えた。この修正がいい感じに働いたことで、マミーを無視してマミーキングに遠距離攻撃できるようになり、良いバランス調整ができるようになった。また、ピンクスライムなどの回復キャラを上方修正したことで、レベルアップするモンスターを支援しやすくなり、結果的に生成系に対抗しやすいようになった。

また、長期戦・短期決戦用のモンスターを4体追加した。あまり環境に影響してほしくなかったので控えめの能力にしたのだが、せっかく追加するならばもっと強くした方が面白かったと思う。

7/22~7/29

最新の修正結果が以下となる。マミーキングの勝率が落ちたので、当初はスカルキングが強いと言われていたのだが、そこそこの勝率であった。おおむね環境が安定しているように見えるが、スカルサンタだけは前回の回復強化により勝率が高かったため、下方修正を行った。

また、目覚めに時間のかかる青鬼、青草スライム、魔術王のステータスを上げて、使いやすくしてみた。まあ、まだ存在感はないが!今後は、8月公開用のゲームに注力するため、このゲームの更新は遅れることになりそうだが、多様性のある環境であり続けてほしいと願うばかりである。

まとめ

以上でモンスター軍団を作ろう!の振り返りを終える。

対戦環境におけるバランス調整は一度やってみたかったので良い経験になった。

振り返ってみると、モンスター同士のシナジーが予想外に噛み合うことが多いゲームなので、非常にやりごたえができたように思う。

ちなみに、このゲームを流用してローグライトゲームを作る予定もある。スライム2体しかない自軍からはじめて、モンスターを徐々に増やしつつより強い敵軍を攻略するゲームになる予定だ。多分このゲームはモンスターを仲間にして軍団を強化する要素と非常に噛み合う気がしている。

ただ、最近猛暑が続くので、次回作はホラーゲームを作ります!やっぱり夏は怖いものでしょう!お楽しみに!