記憶のない僕が彼女と旅館に泊まったら 制作秘話とプレイデータ集計

この記事は「【トリックテイキングゲーム】記憶のない僕が彼女と旅館に泊まったら」の製作記事とネタバレ記事となります。

ぜひ一度プレイしてからお読みいただけると幸いです。

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今回の製作はめちゃくちゃ苦労した

2022年5月公開予定のゲームですが、公開が6月6日になってしまいました!

作業量が多くて完成しない&面白くできているか自信持てなかったという二つの要因により、完成時期が延びてしまいました!

ここまで時間がかかった理由は、ひとえに「新しいゲームルールの作成」に時間をかけすぎたからであります。

世の中には既に面白さが判明しているゲームルールがたくさんあります。

「弾を飛ばして敵を撃破する面白さがあるシューティングゲーム」とか「モンスターを倒してレベルアップする面白さがあるRPG」などですね。

こういったゲームは、過去に遊んだ経験から面白さが明確なので、面白さの勘所をしっかり外さずにゲームを作りこんでいけば基本的に面白くなるものです。

しかしながら、今回は「人の好物順に強さが決まるカードを用いた新しいゲームルール」を開発しようとしていました。

これは以前このルールで大富豪を作ったところ、中々好評だったので、大富豪以外で何か面白いゲームルールができないかと考えたことが発端となります。

当時の製作振り返り記事を書いていますが、この大富豪ゲームもプロトタイプが面白くなかったのでめちゃくちゃブラッシュアップに苦労しました。

これは「人の好物順に強さが決まるカード」という要素に面白さもへったくれもないことが原因だったのだと思います。

大富豪ゲームではこの問題を解決すべく、うんうんと唸り続けた果てに「彼女の好みがわかることで、性格や個性がわかってくる」というシナリオに紐づいた仕掛けを思いついたことで、面白いゲームとして完成させることができました。

ただ、これでうまくいったと思って、今度はこの「人の好物順に強さが決まるカード」だけを流用して新しいゲームルールを考えてみようとしたのです。この要素だけでは面白くなることはないのに!

このゲームの方向性のミスにより、ゲームが面白くならずにだいぶ時間がかかってしまいました!

色々と考えた末、「トランプのナポレオンみたいに、カードの大小で勝負を続けて、その勝ち数を予想するゲーム」であるトリックテイキングゲームにすれば行けるんじゃないかというアイデアを思いつき、実際に制作をしました。

ただ、このトリックテイキングにも問題がありまして、「トリックテイキングゲームは対戦者との駆け引きが面白さの肝であり、CPUと対戦してもそこまで面白くなりにくい」のです。これに気が付いた時はもう5月末だったので、「あ、これは5月中完成無理やな」と諦めて延期してしまった次第であります。

これらの「メインゲームが面白くならなさそう」という問題に対して、「相手の手札を予想できるヒントをいれて推理要素を追加する」などの工夫をしていきました。

ある程度は面白くなったので、この施策はうまくいったのですが、やはり何度も繰り返し遊ぶと飽きてしまうため、ゲームルールレベルから変更が必要だったのかなと思っています。

最終的な解決策として「探索パートという別の面白要素を付け足す」という方法を今回は採用しました。

ということで、以下ツイートのように探索パートを急遽制作することになったのです。

旅館から脱出すべく探索するという要素は、どう考えても面白くなる要素です。

脅威からの逃亡・脱出」は人間が本能的に快楽を感じる感覚です。子供のころに鬼ごっこやかくれんぼが好きだったのは、この感覚があるからだと思っています。

最終的にはこの探索パートを入れることで面白さの担保をすることにしたのですね。

ただ、この追加要素の実装でかなり追加の開発時間がかかったのも事実です。

ぶっちゃけ、この探索パートはそれをメインゲームにしてもよいくらいの内容なので、はじめから探索パート一本でゲームを作ってしまった方がよかったなあと後悔している次第でもあります。

おそらく、次作るホラーゲームはこの探索パートメインのゲームになるかと思います。システム設計のノウハウは今回できたので次回はもっと簡単に拡張性のあるプログラムを書けそうです。

こういった「面白さを追求する上で絞り出したアイデア」は今後のゲーム制作にかなり有益になります。やはり、定期的に新規研究開発をしていった方が自分の作風の幅を広げることにもつながりますからね。

そういったことも踏まえて、今後も定期的に「ゲームルールを1から考えてみる」ということをやっていこうと思っています。めっちゃ疲れますけどね。

ちなみに、来月(6月公開予定ゲーム)は「スコアが増えて楽しいミニゲームと突拍子もないストーリーが魅力のアゲアゲ君シリーズ」を制作します。

これは完全に面白さがはっきりしているので、本当に気楽に楽しく作れてサイコーですね!こういう「面白さがはっきりしている引き出し」もどんどん増やしていきたいところです。

ちなみに、自分の作ったゲームルールがきちんと面白いことを確認する一番の方法はテストプレイです。このゲームは何と公開日である6月6日当日にテストプレイをもらって、「あ、このままだとやばいな」と気が付いた次第なので、修正がめちゃくちゃ大変でした!

みなさん、ゲームの基本的部分が完成したら、すぐにテストプレイをお願いした方がいいですよ!そこでブラッシュアップしてから周辺のシナリオやら追加要素を作れば、まず間違いないです!

シナリオはめちゃくちゃ頑張った

ゲーム部分はちょっとうーんと思ってしまったのですが、シナリオ部分はかなり良い出来になったのではないでしょうか。

シナリオのテーマは「誰も助けてくれないとわかったときに、自ら道を見つけて自立していくという希望」です。作中に登場した語句「王子様信仰」というと女性だけを考えてしまいますが、これは男でもありうる話。

人は無意識に「良い大学でて大企業就職すれば万事うまくいく」みたいな「周囲の人間の模倣」をしてしまうものです。大多数が模倣していることなので、8割くらいは正しくて、良い生活を送れます。ただ、時にはうまく模倣ができずにストレスを貯めこみ、人格が歪んでしまうということもあります。

こういう時に、人は思いっきりレールを踏み外してみたくなってしまうものです。この現象が「反抗期」だったり「ミドルエイジクライシスからの脱サラ」 だったりするのでしょう。「会社員長く務めてきたけど、もう限界だ!会社辞めて飲食店を始めよう!」とか「授業受けてキラキラエンジニア目指すぞ!」とか「渡米してハリウッド俳優目指すぞ!」とか、そういった方をtwitterなどではよく見かけます。

これは未来に希望を求める限り、人間として自然な行動だと思いますし、客観的に分の悪い賭けに身を投じるその行動こそが本当の自立の始まりなのだと思います。

ただ、たいていは失敗するところ含めてワンセットです。

ただ、その失敗からの立ち直りこそが自立した人間の本当の始まりだと思っています。そして、失敗から立ち直る人の姿はとても元気づけられるものです。今回彼女は社会に疎まれる形で自分だけの道を見つけることになりましたが、それも一つの人生なのでしょう。

バラバラとなった過去の記憶を全部整合すると、彼女がなぜ怪異となったのか、何が目的なのかがわかると思うので、ぜひぜひ彼女の生きざまを見守ってあげてください。エンディングが2種類あるのは、彼女の生殺与奪をあなたに判断してもらうためにあるのです。片方の到達率が低いので、もしかしたら見つけられていない方も多いのではないかと思いますが!

たぶん自分は今後もこのテーマを元としたシナリオを手を変え品を変え作っていくことになるでしょう。

ちなみに、表面プレイ結果のこの大浴場は2Fの大浴場であると彼女は述べていますね。表の世界は甘い幻覚の世界なので、きれいな大浴場に見えますが、本当の大浴場の姿を確認したい方は実際に裏面の探索パートにて、2Fの大浴場に行って真の姿を確認するとよいでしょう。

さて、プレイデータ集計に移ります。

プレイデータ集計

初公開した6/6から6/10までのプレイデータを集計しています。

結果画面到達率、裏面に到達率

このゲームを読み込んだ人数を母数としたときの、表の大浴場画面であるスコア結果画面到達率、裏面のゲーム開始地点までの到達率を集計しました。 結果は・・・!

結果画面到達率:58.14%

裏面開始到達率:40.15%

結果画面到達率が6割弱もいます。思ったよりもトリックテイキングゲームを楽しんでいただけたのかもしれませんが、ゲームオーバー時にもこの結果画面には到達するので、単純に到達しやすかったのだと思います。

一方、裏面開始到達率は4割と低め。6割の方はこのゲームを普通の温泉旅館カードゲームと思ってプレイされているという事実が明らかになってきました。裏面移行するために過去の主人公の記憶を辿ろうとすると「思い出すな!後悔するぞ!」と脅してあったので、それが効いたのかもしれません。

または、単純にゲームに飽きてしまった可能性もあります。これはゲームルール設計の失敗でもあるので、次回リベンジしたいところです。

実際、表面のみであればホラーゲームにならないので、ホラーゲーム苦手な人でも一応は楽しめるようになっています。逆にホラーゲーム好きな人は「おしちゃいけないボタン」をついつい押してしまうもの。そういった禁忌を破ることで、本当の恐怖が始まるのです。

即死トラップ到達率

次に即死トラップに引っ掛かった人の割合を調べてみました。

即死トラップ名称は、実際に体験した人ならばわかるような名称にしています。

この集計データはgoogle analyticsという統計ツールを用いて計測しているのですが、各種エンディング到達イベント通知がリアルタイムで見られるので、まるでデスゲームの主催者にでもなったかのような気分でした。

ちなみにここからは、母数を裏面開始到達人数としています。裏面のデスゲームに参加してしまった方のうち何名がそのエンディングに到達したのかを集計しました。

・非常口END:73.11%

食虫植物END:66.98%

・吊り天井END:66.51%

・レンコンEND:65.09%

・自由落下END:58.96%

・水たまりEND:54.25%

非常口ENDの到達率がひときわ高いですね。一応ゲーム中に過去の犠牲者の記憶をたどると「非常口には行くなよ」と警告していたはずなのですが、興味本位で入ってしまったり、初見で選んでしまう方が多かったのではないかと思います。実際このENDはしっかりと力を入れて制作しているので、楽しんでもらえたら幸いです。

ちなみにあのエンディング画像の歯がなぜ赤いのかというと、この歯垢染色液使って撮影したからです。

ちゃんと歯を磨けているのか確かめたくて買ってみたのですが、磨き残しがあるのかを調べることができて面白いのでお勧めです。その代わり、床にこぼすとめちゃくちゃ染みついてとれないのでかなり注意して使った方がいいですよ!特に服につくと地獄!

その他、基本的に犠牲者の記憶をみていればまずハマることがないエンディングなので、おそらくカードゲームで遊ばずに室内探索をはじめた方が一定数いたのでしょう。実際、探索パートは楽しいですからね!

201号室など、情報がないとたどり着きにくい場所もあるので、おそらく探索中に偶然得点を獲得して記憶を解放していったのではないかと思います。

エンディング到達率

最後にエンディング到達率の集計です。

こちらは、「タイトル画面到達率を母数とした場合(全体割合)」と「裏面開始到達人数を母数とした場合(裏面到達割合)」の両方を求めていきます。果たして結果は・・・!

少女生存END到達率

全体割合:29.36%

裏面到達割合:70.28%

怪異殲滅END到達率

全体割合:23.30%

裏面到達割合:58.02%

簡単な方のエンディングである少女生存ENDの到達率が裏面到達割合で7割もありました。思った以上に高いです。一方で、怪異殲滅ENDの到達率は少し下がります。このエンディングの存在に気が付かなかった方がある程度いるのでしょう。または、彼女の生きざまに感銘を受けて、そのままにした可能性もありますね。

まとめ テストプレイしてブラッシュアップを心掛ける!

紆余曲折ありましたが、なんとか公開することができました。

作風の幅を広げるためにも、定期的に「面白くなるかわからない実験作」を作成するようにはしているのですが、本当に確認するならば、しっかりプロトタイプを制作した段階でテストプレイをしてもらうことが大事だと思いました。

今回は、この新規研究的な製作の中で「間取り図を配置して探索パートを行う」というシステムがかなり好評だったので、次回以降はこれをメインにした脱出ゲームを作っていきたいと思います。完成した暁にはぜひお楽しみください。

・【トリックテイキングゲーム】記憶のない僕が彼女と旅館に泊まったら

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