前置き
2021年2月5日、「簡単大富豪カードゲーム ヤンデレ彼女のおうちに呼ばれたら」というブラウザで遊べるゲームを公開しました。
このゲームは、一見普通の彼女と大富豪をシンプルにしたようなカードゲームを遊んでいくのほほんゲームです。スマホでもPCでもダウンロード不要で遊べます。
↓画像クリックで遊べるページにジャンプできます。
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と見せかけて、ある程度勝ち抜けて選別されるとそこから闇のゲームがはじまるという、漫画ハンターハンターにてゾディアック家で行われるゴトーのコイン当てゲームみたいなシナリオが魅力のゲームです。
このゲームを怖くないホラーゲーム第3段として、公開しました。
この記事では、いかにしてこのゲームをブラッシュアップしていったかを解説しています。
この記事は上記ゲームをクリアした方か、どうしてもクリアできなくて挫折した方向けの内容です。
まだプレイしていない方はぜひプレイして、頑張ってエンディングへ到達してもらえると嬉しいです。難しいゲームですが!
では、はじめます。
苦労した制作秘話
「ヤンデレ彼女のおうちに呼ばれたら」の制作にはだいぶ紆余曲折がありました。
一番の問題点は「アイデアを実際に形にしたところ、思ったよりも面白くなかった」という点に尽きます。
そこから、どうやって現在の面白いゲームとして生まれ変わることができたのか。その過程を追っていきます。
核となるアイデア
最初に思い浮かんだアイデアは「彼女の好きなもの順に強さが決まる大富豪ゲームを作ったら、面白いのではないか」でした。
「人の好みを当てるゲームは面白い」という知見は昔制作したゲームから得ていました。
以前制作した「人の好みを当てるゲーム」
・さつきちゃんは偏食家
https://hothukurou.com/game/Cancel/index.html
・石油王と遊びたい
https://hothukurou.com/game/Oil/index.html
上記のゲームは「人の好みを当てる楽しさ」をもとに制作したゲームです。相手の気持ちを理解することで、人は共感して快感が生み出されます。
共感による快感は、人間が他人と関わり社会的に生きるために獲得した原始的な快感の一つかと思います。
今回は、この「相手の理解をより高い精度で求めるゲーム」を作ろうというコンセプトで開発をはじめました。
私は自らのゲーム制作ノルマとして「月に一度はゲームを公開する」という目標を掲げています。このゲームを1月度公開ゲームとして、1ヶ月の制作期間を想定して開発に着手しました。
とりあえず企画を形にしてみる
1/3くらいから着手して、アイデア固めや画像集めを1/17くらいまで行っていました。本業の仕事が忙しかったので、このあたりの進捗はそこまでなかったのです。
当時のツイートを振り返ると、アイデアを形にするために具体的なビジュアルを制作していました。
ゲームの核となるカードゲームシーンを実際に作っています。
このゲームはカードゲームなので、プレイ時間の8割も表示され続けるであろうカードゲーム画面のUIは特に時間をかけています。
この時点の企画では「彼女の好きな料理が書かれた20枚のカードを使って、より彼女の好きな料理を出していくゲーム」だけのゲームとして制作しています。
現在公開しているような「表面では彼女と普通に数字が見える大富豪ゲームをする」だとか「ヤギリやイレブンバックのような特殊なカードを使う」といった要素は考えていませんでした。
そんな要素がなくても面白くなるだろうと思っていたのですね。
この「面白くなりそう」という想定が外れてしまったため、このあと大規模な仕様変更があったのですが、この時は知る由もなかったのです・・・!
1/18~1/25の一週間で「好きなもの順に強くなる大富豪システム」を完成させました。実際に遊べるようになったので、このあたりからテストプレイを開始しています。
ちなみにこの頃はまだヤギリやイレブンバックなどの特殊ルールはありません。
ゲーム自体が複雑なので、特殊ルールを追加してさらに複雑にするのを避けた形です。ただ、最終的には「特殊ルールがないと戦略がなくてつまらない!」となり、それらの機能を追加することになるのですが!
タイトル画面の調整
タイトル画面は、プレイ意欲を誘うためにとても大切な要素です。
パッとみて面白そうなデザインにしたいもの。
その時のツイートを見てみると、タイトル画面を「ヤンデレ美少女」にするか「拘束しているホラーテイスト」にするかで悩んでいます。
結果、ヤンデレ美少女を全面に押し出したデザインにしました。
やはり人の心を掴むタイトル画面には、美少女がいた方が魅力があってよいということですね。
最終的にここで決めたタイトル画面は、裏面のタイトル画面として採用しています。
大規模な仕様変更でクソゲーが面白いゲームに生まれ変わる
1/25から、身内のslackチャンネルにてゲームのテストプレイをしてもらいました。
その結果「このヤンデレ大富豪ゲームは、複雑すぎてとっつきにくいゲーム」であることが判明しました。
つまり、このまま公開するとクソゲー扱いされてしまう問題が起きたのです。
いや、そういうときって、製作中になんとなく「これ、クソゲーなのでは」と気がついてしまうものです。今回も薄々感じて履いたのですが、それが実際のテストプレイにより明らかとなってしまいました。
この結果を紳士に受け止め、原因を整理した結果、以下の2点が原因であることが判明しました。
(1)ルールが複雑すぎる(普通の大富豪もどきゲームのルールを理解した上で、好きなものが強さであることを理解する必要がある)
(2)大富豪もどきゲームに戦略性がまったくない
この2つの問題を解決するために、ゲームの仕様を大規模に変更することにしました。
(1)数字が見える状態で大富豪もどきゲームを遊ぶチュートリアルを追加する
(2)ヤギリ、イレブンバックなどの特殊カードを追加して、CPUも賢くする
この仕様変更を1/26~2/3の間に行いました。かなりの仕様変更ですが、それにより面白いゲームへとブラッシュアップすることができました。
チュートリアル面(現在の表面)の制作
まずはチュートリアル部分の実装です。この部分を現在では表面と呼んでいます。
大富豪ゲームの遊び方を理解できるように、カードの数字を表示して遊べるチュートリアルシーンを制作しました。
このゲームの一番の核である「彼女の好みを推測して料理カードを出す」という部分は一旦隠すようにしました。その方が、大富豪ゲームのルールを理解しやすいと思ったからです。
また、チュートリアル面での雰囲気を明るくしてみました。
そうすることで「なぜこの明るいゲームがホラーゲームなのか」という不安を抱えながらプレイすることになり、これが不気味さを演出できそうだからです。
タイトル画面もチュートリアル時のみ表示される偽タイトルを制作しました。
チュートリアル画面では、核となる「彼女の好みを当てる」ゲームのアイデアは一旦隠しています。
まずは普通の大富豪ゲームのルールを学ぶことに注力するようにしたのです。
また、この「シンプルな大富豪ゲームで遊ぶチュートリアル」を面白くするために、特殊カードを実装することにしました。
ついでにCPUもちょっと賢くして、歯ごたえのある難易度にしました。
その結果「チュートリアルなのに普通に戦略性があって面白いゲーム」を作ることができました。
このチュートリアルシーンのことを現在では「表面」と呼んでいます。
みなさんは無事に表面をクリアできたでしょうか。きちんと頭を使わないと、CPUが強くてそこそこ苦戦するかと思います。
もしかしたら、このチュートリアルを突破できずに本編に到達できなかった方もいらっしゃるかもしれません。
表面のゲームオーバー時に到達するバッドエンドは、「彼女が失踪してしまい、呼ばれた家の本当の主は既に死亡していた」という、謎を残してどこか引っかかるエンディングとなります。
プレイヤーはクリアした先の真実を確認するべく、再プレイしてもらえるようなエンディングにしています。
実は「一定の知能がない人間の血液は吸わないようにしている」という裏設定があります。
エンディングにて「血液に記憶がある」ことが明かされますが、ヴァンパイアは「血液から記憶や知能を吸収する能力」があるので、頭の悪い人の血液を吸いたくないのですね。
このあたりの設定をノベル内に入れる余地がなかったので、ここに書いておきます。
さてゲームづくりの本題に戻ります。
複雑なルールを理解しやすくするための工夫として、チュートリアル説明を各ステージごとに小出しにするようにしました。
ちょっとずつルールを覚えてもらいながら、遊んでもらう。ちょうどよいチュートリアルができたかなと思います。
そして、全てのチュートリアルをクリアした時、ついに本編(裏面)の「彼女の好きな料理が強い大富豪ゲーム」がはじまるのです。
小さな勝利を積み重ねる工夫
料理名カードが書かれた裏面でも、段階的に学習してもらうための工夫をとりいれました。
人はいきなり大きな目標を与えてしまうと、何からはじめたらよいか迷ってしまうものですが、小さな目標であれば進むことができます。
小さな目標を徐々に積み上げて、無理なく成長してもらうために、次の2点を導入しました。
(1)使用する料理カードを4枚→8枚→12枚・・・とだんだん増やしていくようにして、「料理の強さを少しずつ学べる」仕組みを導入しました。
最初は4枚のカードだけを使用して遊びます。このステージは難なく突破できるかと思います。次は8枚で挑戦、その次は・・・と徐々にカードを増やして行くことで、難易度を徐々に増やしていくことができます。わかりやすい「小さな目標の積み重ね」ですね。
(2)「5問連続でお手つきしなければ血液が回復する」といったボーナス要素も追加しました。
この要素は「5問ごとの小さな目標をプレイヤーに与える」といった作用があります。プレイヤーはこのハートを5つ揃えることを目標にして、カードを出していくことになります。これもまた、小さな目標の一例となります。
このように、小さな目標はゲームを継続してプレイしてもらうために大切な誘導となります。
小さな目標を積み重ねてもらうことで、ほどよく達成感を得ることができるので、大きな目標である「このゲームのクリア」を達成するまで楽しくプレイすることができるのです。
ここまで工夫を取り入れると、ようやくテストプレイをしてもらった方からクリア報告が届くようになりました。
やはり、以下の2点を意識することが、面白いゲーム作りには必要みたいです。
・ルールを少しずつ理解するチュートリアルの導入
・小さな勝利を積み重ねてもらう工夫
この修正の結果、無事に2/5に「ヤンデレ彼女のおうちに呼ばれたら」が公開されました。感無量です。
集計データの発表
さてここからは、twitterで集計したデータの発表と考察を行っていきたいと思います。
難易度について
google analyticsではチュートリアルとして実装した表面の突破率は60%ほどのでしたが、6回以上失敗してようやくクリアした方が多かったようです。
ちょっと難易度が高すぎたかもという後悔もあるのですが、6回以上失敗しても挑戦したくなるようなよいゲーム性やシナリオが作れたということでもあるので、その点は満足です。
作者が何度かプレイした限りでは「最善手を出していけば、実力で表面を最後までクリアできる確率は60%程度」です。基本的に先行であるプレイヤー有利なゲームなので、ヤギリやイレブンバックをうまく利用すれば実力で勝てるはず。
表面でつまづいた方も、ぜひ諦めずに頭を使って表面クリアを目指していただければと思います。
一方、難しいと思っていた裏面ですが、1~4回でクリアする方が多かったようで、安心しました。
テストプレイ中に起きた大惨事「誰一人クリアできずに飽きてしまう状況」は避けることができたかなと思います。自分の想定以上のクリア率でした。
完全クリア率とエンディング分岐
2021/03/07 3:00時点でのクリア率とエンディング分岐割合です。
クリア率24.7%とのことですが、想定値はもう少し低かったので予想以上に頑張ってクリアしていただいた方が多買ったのかなと思います。嬉しい限りです。
エンディング分岐ですが、「二人で生きる」を選んだ方の方が多いようですね。
やはり、彼女の可愛さに心を射抜かれた方が多かったのではないでしょうか。
(ちなみに作者の予想では、孤独に生きるを選ぶ人の方が多いかと思っていました。あんな理不尽なゲームを強いる彼女の面倒をみるのは厳しいと思う方が多いかと思ったので。)
フィクションなのでよりロマンスがある方を選んだ方が多かったのかなと思います。
まとめ
以上でヤンデレ彼女のおうちによばれたら、の制作秘話と各種統計結果の公開をまとめました。非常に長い文章になりましたが、最後までご覧頂きありがとうございました。
万が一、まだクリアしてないよ!という方がこの文章を読んでいましたら、ぜひもう一度プレイしていただきクリアしていただければと思います。
また、宣伝大歓迎です。SNSなどで友達にこのゲームを紹介しましょう!友達がどちらのエンディングを選ぶのか、楽しみですね!