ゲーム画面をめちゃくちゃ作り直して頑張った話

ゲーム画面作るの難しすぎるううううううう!

自分で考えたゲームを作ろう!と思い立ったはいいが、そのルールをわかりやすく表現するゲーム画面を作るのはとても難しいものである。

既存のゲームを参考にして制作したものであれば、その画面を踏襲すればあまり悩まないと思うのだが、これが完全にオリジナルルールのゲームとなると、ゲーム画面を作っては壊し作っては壊しと試行錯誤に時間をかけることになる。

どの位置にボタンをつけるかとか、どこに数値情報を載せるかとか、そういった情報の取捨選択をしながら画面のレイアウトを調整していくのだが、せっせとプログラムを組んで画面レイアウトを作成したとしても、実際に遊んで納得いかないとまた一から作り直しとなるのだ。

今回は私が2022年1月似公開したゲーム「【拡大再生産ゲーム】お姉さんとドキドキ人類繁栄工場」を通して、ゲームの画面設計を何度も作り直した悪戦苦闘の日々をつれづれと書いていきたいと思う。

待ち行列理論をベースとしたゲームを思いついた

今回制作したゲームを最初に思いついた時のツイートはこちらである。

仕事の稼働率についての記事を読んだときに思いついたのだ。

常に100%で仕事をすることを目標にしてはいけない。

そもそも仕事量にはばらつきがあるのだから、毎日100%で仕事の負荷を与えると、対処しきれなかった仕事がどんどん積み重なってしまうよ!という内容である。

仕事をためないためには、日頃から70~80%の仕事量に押さえておいたほうが、不測の事態が起きても残りの仕事量を使うことでカバーすることができる。

最初にこの話を聞いた時、「あ、この話そのままゲームに使えそうだな」と思った。

具体的な例で話してみる。

例えば、ドーナツを作る工場を考える。

その生産工程をA工程:「生地を作る」B工程:「ドーナツの形を整形する」C工程:「ドーナツを揚げる」の3工程で考えたとする。

各工程で作成できる量にはばらつきがある。ここでは各工程で1時間に1~6個制作できるものとする。このような時、たとえ各工程の平均制作量が1時間に3.5個で同じだったとしても、時間が立つにつれて仕事詰まりが発生してしまう。

大量の生地が整形されずに、長い間放置されてしまうのだ。

この現象を待ち行列現象と呼ぶ。

この現象を適切に対処しつつ各工程の生産量を増やしていくゲームを作ろうと思い立った。

どうせ作るならばドーナツよりも非現実的で刺激的なものを生産したい。

そうだ!人間を生産することにしよう!ということは主人公は創造神だ!

と、思いついたのでこのような待ち行列現象をテーマにした人類生産ゲームを制作することにした。ゲームを制作する上で興味深いテーマは人の心を掴む上で非常に大切なことである。

ところで、ゲームの1ジャンルとして「拡大再生産」と呼ばれるものがある。これは、生産量を徐々に増やして資金を得て、その資金で設備を増強してより多くの生産を行うというゲームである。徐々に生産量を増やしていくゲームは人間の成長欲求をとてもよく刺激してくれるため、非常に中毒性があり人気がある。

ということで、面白くなりそうなゲームロジック「拡大再生産」についても検討がついた。あるゲームを思いついた時、そのゲームが面白くなる根拠をいつも考えるのだが、今回はみんな大好き拡大再生産が面白さの核になるだろう。

さて、ここからが本題である。実際にこのゲームをゲーム画面に落とし込む。これがとても難しいのだ。

モックアップを作って具体的にしてみる

実際にプログラムを組んでゲーム画面を作るのは流石に時間がかかるので、とりあえずかんたんなモックアップを作成してみた。

ちなみに最初はアンドロイドを制作するゲームを考えていた。

・三種類のアンドロイドを3つの工程から制作する。

・アンドロイドを生成する工程は3種類あり、それぞれの機械がある。

・新しい機械を購入して、より生産量を上げていくことができる。

これをもとに実際にモックを作り上げてみたのが以下ツイートである。

モックを作りつつゲームの構想を深めたことでイメージが8割くらい固まった。

やはりモックで具体的な形を考えると、改善点を見つけやすい。

ここから仕様をもう少し煮詰めて実際にプログラムを組んでゲーム画面を作成してみる。

・人間を生産するゲーム。人間は♂と♀の二種類がおり、人間を生産するとポイントがもらえる。

・人間は、土塊→人形→人格と3工程を踏んで生成する。

・各工程はショップ画面からより生産量のよい設備にアップグレード可能

このような仕様をもとに制作したゲーム画面が以下となる。

さて、この文字と数字ばかりの画面をみてどう思うだろうか。

このゲーム画面を見た時、「何が起きているのかよくわからん!」「新聞の株価欄くらい情報が密集して見づらい!」と思った方が多いのではないだろうか。

一番の問題は、「グラフィカルな要素がまったくないので、何をどれくらい生産しているのかまったくわからない」という点である。

この課題点はゲーム会社勤務のウェレイさんから指摘いただいた。まあ、たしかにグラフィカルに製造工程がわからないと、人間がどのように作られているのか理解しづらいものである。

これを解決するために実際に土塊・人型・人間のグラフィックを用いて生産工程が直感的にわかるように変更を加えてみた。

これでだいぶわかりやすくなったと思う。

左から右へ徐々に人間が製造されていく工程が非常に平易に理解できる。

ただ、これでもまだまだ「どこを見たら良いのか分かりづらいゲーム画面」である。

できれば、一番右側に出荷額(のちに誕生ポイントと改名)をつけて、一番右側に獲得GOLD(のちに人類繁栄ポイントに改名)を表示したいところである。

ただ、スペース的にそれができない。どうしようか・・。

この話を大学の同級生である中野藤右衛門さんに相談していた。彼は広告業界出身であり、プレゼン発表を頻繁にこなしていることから、人に伝えるデザインセンスは卓越していた。中野藤右衛門は「俺に一晩アイデアを考える時間をくれ」と言われたので「平日夜にマジか。明日も仕事やん。」と思って待っていたら結構良さげなゲーム画面のモックを持ってきてくれた。

縦に長いゲーム画面なのだから、横に移動するデザインよりも縦に移動するデザインの方がスペースを多く取れるよ」というアドバイスだ。

早速試してみた。そうすると、非常にわかりやすいUIになった。

中野藤右衛門によると、F字に視線が向くようなデザインにしたのだという。

人間の視線の動きを意識したデザインということになる。

確かにこの見え方ならば理解はしやすい。さらに、人間が完成した時にその視線の先に誕生ポイントが表示されるので、視線誘導的にも非常にわかりやすい。

このあたりで実際に遊べるようになったので、シナリオ周りを整備したりゲームバランスを整えたりしていた。

そして、このあたりから本格的にテストプレイを内々でお願いすることにした。実際に遊んでもらわないとでてこない改善案は結構あるものである。案の定、色々な方からのフィードバックをいただいた。

バランスを整える上で、だごんさんから「設備投資より、設備アップグレードにしたほうが面白そう」というアドバイス、もんがーさんから「維持コストやゲームのメカニズムがわかりずらい」というアドバイス、Nesさんから「シナリオ部分にスキップ機能がほしい!」というアドバイスをいただいたので、その改善のための実装をこなしてより、わかりやすく遊びやすい方向にゲームをアップグレードしていた。

やはり、一度テストプレイをすると遊びやすさはかなり改善されていくものである。

テストプレイをお願いしているうちに、ないちさんから「機械を強化する時に頻繁に設備投資画面ボタンを押して、ショップ画面に移動するのが結構めんどくさい」というフィードバックをいただいた。

この当時は機械の強化をする時は、設備投資ボタンを押してショップ画面へ移動して、そこから強化したい機械を選ぶ必要があったのだ。たしかにその動作は結構めんどくさいものであった。

ショップ画面に移動せずに機械を強化できるように「設備強化ボタン」を各機械ごとに設置した方がよさそうとのことだが、今でさえ情報量ギチギチの画面にこれを追加するスペースあるかな・・・。

と思っていたら、なんとないちさんもゲーム画面のモックを作成してくれた。さすがunityroom運営で鍛え上げたUI設計力である。実際には、視認性を担保できるテキストの大きさに縮小の限界があったので、モック通りの実装はできなかったのだが、それでもうまくゲーム画面を調整したところ、なんとか設備強化ボタンを追加することができた。

これでいけるか・・・と思っていたが、これでもまだ数字周りの表示位置が雑だったので、もう少し改善できないかと再度ウェレイさんに相談してみた。

さすがはゲーム会社勤務のウェレイさん。カードゲームの文法を参考に、各設備の数値を見やすい形で配置するアイデアを提案してくれた。

具体的には、真ん中に生産可能数、左下にレベル、右下に生産した素材数を表示する。特にレベルの表示が非常に良いアイデアで、このレベル表示は「設備をアップグレードした時の楽しさをより引き上げる」という素晴らしい効果があるのだ。

最後にzanberさんのアイデアによりゲームの設備に、生産能力により変化するアイコンを追加した。これはレベルアップ表示と同様に「アップグレードを楽しくする」という効果がある。こういう成長が実感できる仕組みは意識的に取り入れていった方がゲームの面白さを伝えやすい。

そうこうしているうちに2021年は終わった。2022年、ゲーム公開できるようにテストプレイを続けてゲームバランスを見直したりバグ修正を行い、なんとか1/11にゲームを公開することができたのだ。

ゲーム画面の変更といえば、公開直前に「人間誕生ポイントの推移をグラフ表示する」という変更を加えた。(誕生Pt.のバックに表示されている青色・桃色の棒グラフ)

この誕生ポイントは過去の値動きから今後の動きが予測できるようになっていた。これは結構必要な情報だったのだが、公開直前までどのように表示しようか悩んでいた部分である。その推移グラフもなんとか誕生Pt.の背後に設置することができた。

まとめ

こうして実際に完成したゲームが以下となる。

https://hothukurou.com/game/Factory/index.html

振り返ってみると、ゲームの軸となるロジックはほとんど変化していないにも関わらず、かなり頻繁にゲーム画面の変更を行っていたことがわかる。正直ゲーム画面の変更は結構時間がかかって面倒ではあったのだが、今回は明確に問題点が改善されていたので、それをモチベーションとして頑張ることができた。

やはり、今まで存在していないゲームを形にすることは難しいことなのだと思う。

いや、もしかしたらこんな感じの似たような拡大再生産ゲームが過去にあって、自分はそれを見つけられていないだけなのかもしれない。そういう意味では、色々なゲームをたくさん遊んでいた人はこういったゲーム画面デザインの引き出しが多いのかもしれない。