教祖になって全てのクリエイターをハッピーにする新興宗教を立ち上げよう!

新しい思想で、困難に喘ぐ全ての創作者をハッピーにしよう!

完全教祖マニュアルという本が面白かった

宗教の成り立ちって、こんなに面白いのか!

と思ったきっかけになった本、完全教祖マニュアルという本をご紹介します。

見るからに怪しい本ですが、企画屋:堀元さんの紹介記事 を読んで興味が湧いてきたので購入することにました。

「古今東西の宗教の歴史を元に、新興宗教の作り方を教えます」

という好奇心をくすぐられる内容が動力源となり一気に読破してしまいました。

むっちゃ面白かったです。

あまりにも面白かったので、この日のツイートはほぼ「完全教祖マニュアル」一色になってしまいました。

宗教ってなんで存在するの?

この本の序文では、現代日本にありがちな「宗教アレルギー」を解消するために、人にどんな利益をもたらすのかということを書いています。

我が家は代々、「南無阿弥陀仏」と唱えているだけで極楽浄土に行ける浄土真宗なのですが、それを意識するのは葬式程度です。あまり宗教と関わりの薄い環境なので、「宗教」というワードは必要以上に避けていました。

そんな環境なので、昔から「新興宗教にハマる人って何がきっかけなのだろう」と思っていましたが、この本を読んで非常に納得しました。

本書によると、宗教の目的は自己肯定感を与えることなのだそうです。

信者は神様がいつも見守っていることで自分の人生を肯定することができます。

たとえば、突然会社クビになった。という困難が降りかかったとします。

普通の人間ならば、「ああ、どうしよう。俺の生き方が間違っていたのだろうか。」と悩むところですが、宗教に入るとこんな思考になります。

「これは神様が与えた試練なのだ。神はきちんと私を見ていて、教育を施してくれているということ。きちんと乗り越えてみせます!」

日頃の信仰により「神様が自分を見てくれている」と確信していることで、物事を肯定的に捉えることができるのですね。

個人主義が進む現代社会で、これほどまでに強く生きていくことができる手法は他に中々ないのではないでしょうか。

この本では、宗教は「現在の社会思想においての弱者に対して、その人を肯定するような思想を提供することで精神的安寧を提供し、ハッピーにすることができる」ものであると書いています。

わかりやすく言うと、「周りよりも劣っていると感じている人」に対して、「実は君はとても良い生き方をしているんだ。優れているんだよ」と伝えられることで、劣等感を解消して幸福を与えることが、宗教の重要な意味なのです。

 これであなたも宗教に興味を持ったのではないでしょうか!え・・・ない?

もちろん、俺もどこかの宗教に入信しようとは微塵も思いません。

しかし、宗教の構造を理解することで、「より自分を幸せにできる哲学を構築する方法」を模索することができるのです。

さて、社会的弱者を救うために必要なことは「反社会的な教義であること」であることです。

いよいよやべえカルト宗教の匂いがプンプンしてきましたが、そんなことはないので安心してください。

「今の社会で優れている人はダメ!今の社会では、悪とされていることだが、君のような人間こそ優れている!」と伝えることで、社会的弱者の劣等感を解消することができるのです。

 

 

具体的な例を考えてみたいと思います。

例えば、あなたが「ニート」を救う宗教を設立しようと思ったとします。

ニートを救う教義を考えてみましょう・・・。こんなのはどうでしょうか。

「行き過ぎた労働は他者を滅ぼす害である。休息している人ほど尊い」

 

こんな教義を提供すると、ニートの生き方を肯定することができるのです。

この思想は「労働は悪」という反社会的な思想を持っています。しかし、この反社会的な思想故に、現社会思想で弾圧されたニートを救うことができるのです。

   

 意外と簡単じゃないですか?人間は常に自分を肯定する存在がほしいものです。

そして、自分を肯定することで、結果的に人生を前向きに生きることができます。

宗教、ちょっと興味がでてきたんじゃないですか?ね?ね?

抑えがたき欲望がひょっこり顔を出す

さて、この本を読んでいる最中、私の心の中にある欲望がひょろひょろと顏を出してきました。

自分も教祖になって新しい社会思想を広めたい・・・。

全ての創作者を救済するような宗教団体を設立したらいんじゃないか。

 欲望に任せてこんなツイートしたら、そこそこ良い反応がありました。

上記のツイートはゲーム制作に限定していますが、この悩みは全ての創作活動に通ずるものがあります。

「趣味で創作活動を作り続ける人の苦悩と葛藤」を救うことができる教義を生み出せば、自分でも新しい宗教を立ち上げることができるのではないでしょうか

ということで、早速新宗教に設立に動き出すことにしました。

そうして、そこそこイケテル教義と哲学を考え、無事に今回完成となりました。

ちなみに、完成した宗教紹介ページは以下です。このページが今後聖典として扱われていくことになるのでしょう。この聖典を読みながら、工夫した点を解説していきたいと思います。

クリエイターを救う教義を作ろう

■宗教名を決める

まずは宗教名を決めることにしました。これは先ほどのツイートの通り「クリエイター教」に決定します。

「クリエイター教」というと非常にダサいネーミングになりますが、「一目見てどんな目的を持つ宗教家一目瞭然」という信者を集めやすくなるメリットがあります。

最近のタイトルが長いラノベによくある「タイトルで中身を想像できるようにする」手法です。

宗教の活動内容が名称からわかれば、安心して入信する人が増えることでしょう。

■教義を決める

教義を決める時には「ターゲットの社会的弱者を救えるか」を考えて決めると良いでしょう。

今回救うべき対象者の人物像はこんな感じになります。

創作制作中、本当に自分の活動が正しいのかわからなくなり、成果物が完成しないことがあります。

また、複数人で開発していると、方向性の違いから仲間と対立したり、フェードアウトする仲間が出てきます。

そうして長い間家に籠って創作活動を続けていると、いずれは社会的な目も厳しくなり、自分に自信が持てなくなってしまいます。

・・・非常に胸が痛くなるようなイメージ像です。

さて、上記のイメージ像を救える教義を設定すると以下のようになる。

全てのクリエイターは「ライトスタッフ」という「自分だけに与えられた、面白いと思う創作物を作ることができる資質」を持っています。
世の中には「そんな物を作って、何が楽しいんだ」と、世迷言を話す輩が多いと思います。

そんな中で、あくまで自分の「ライトスタッフ」に耳を傾け続け、

ただひたすらにゲーム制作を行い、公開することが、自分を幸せにし、社会全体を次の時代に飛躍させることができるのです。
自分の「ライトスタッフ」だけに耳を傾け、ゲーム制作を行いましょう。

ちなみにライトスタッフ(英名:The Right Stuff)とは、映画のタイトルです。

いつ死ぬかもわからぬ有人宇宙飛行のパイロットが、国からの重圧に耐えつつも「自分だけは必ず生きて称賛を浴びる資質を持っている」と信じ続ける話です。

このライトスタッフの概念、とてもいいなと思ったので教義に拝借したいと思います。

つまり、「自分だけに与えられた、本当に面白い創作物を作る資質を信じ続けて、一心不乱に創作活動しなさい」ということをこの宗教は教えている訳です。

 

 

この教義に従うことのメリットは「どんな困難があろうとも、ただ創作制作だけしていれば良いのだ」という肯定を信者に与えることができる点です。

創作活動をしている方の心理的不安をここまで解消できる思想はないでしょう。

創作活動は不安の連続。最初は自信満々なアイデアを持っていたとしても、製作途中で必ず「自分の作っている物が本当に意味があるのか」と悩む日が来ます。

また、大きなものを作ろうとすると、その膨大な制作工程に「そもそも本当に完成するのだろうか」と、頭をもたげることだってあります。

複数人で制作していた日には「方向性の違いからメンバーの離脱したり」「飽きてフェードアウトする仲間」など、一人の時に比べて問題発生率が掛け算のように増えていくことになるのです。

 

そして多くの場合、上記の悩みが原因で創作が完了せずに、未完成のまま放置されてしまうのです。これほど悲しいことは他にありませんね。

 

「どんな困難があろうとも、ただ創作活動だけしていれば良いのだ」 という確信さえ持てれば、どんな困難に会おうとも創作活動を続けることができます。

  

この教義によって肯定を得た信者は、どんな困難も「ライトスタッフがある限り自分は正しい方向に進んでいる」と確信を持って創作活動を進めることができるでしょう

さて、この宗教のすばらしい教義とその効能について理解していただけたと思います。もしかしたら、入信したくなった人もいるかもしれません。

次に、今回の宗教について工夫した点を書いていきたいと思います。

実際の聖書(下のリンク先ページのことです)を読みながら、どの点に工夫を込めているのか確認しましょう。

宗教に必要な要素をそろえる

完全教祖マニュアルでは、宗教に必要なチェックリストを用意しており、このチェックを全て埋めることにより、誰でもお手軽に宗教を設立することができます。

さて、このチェックリストから、今回参考になったものを列挙していきたいと思います。 

・神は用意できたか?

本宗教では神の存在は明言していません。しかし、教え(1)に「ライトスタッフ」を授ける大いなる存在を匂わせることにしました。

全知全能の存在は、相応しいものに大いなるライトスタッフを授けることでしょう。

 全知全能の存在ってなんやねん!と突っ込まないでください。私もわかりませんから。

  • 教えは反社会的か

本教義は反社会的です。

周りの話に耳を傾けず、自分だけに従え!」という協調性とは真逆の思想を推奨しているからです。

まあ、周囲の反対を押し切って創作を続ける人ってなんかカッコイイので、よしとしましょう。黙って背中で語るように、日本は職人の国ですから。

 

  • 誰でも1分で理解できる教えか

教義が難しすぎると、せっかく作った宗教も全く浸透しないようです。

このあたり、完全教祖マニュアルではしっかり具体例付きで説明していました。

ちなみに超エリート宗教である仏教は、出生地のインドでは農民層に根付かず、後にヒンドゥー教、イスラム教により駆逐されました。まあ、しょうがないですよね。仏教ってクソ難しいですから。もちろん日本に来たからといって仏教が簡単になった訳ではありません。やっぱりクソ難しいままです。しかし、そんなクソ難しい仏教を、分かりやすーくした教えが現れました。それが浄土教です。「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽に行って成仏できるよ」というとてもシンプルな教えです。
架神恭介; 辰巳一世. 完全教祖マニュアル (ちくま新書) (p.49). 筑摩書房. Kindle 版.

仏教って、地元の農民には流行らなかったのか・・・!と面白い雑学をちりばめている所も完全教祖マニュアルの面白い所です。

さて今回は、「ライトスタッフに従え!」という簡単な教えにしました。

ライトスタッフの解釈が抽象概念なので難しい気もするので、「わからないよお!」と言っている入信希望者には「自分の信念に従え!」と言い換えて理解してもらうことにしましょう。

 

  • 民衆の不安を煽ったか

今現状、普通に生きていたら「今入信しないと行けない程不安な状態」にはならないわけですが、

いくつかの宗教では「お前は知らないかもしれないが、実は今とても困った状態なんだぞ」と感じさせる教えを仕込んでいます。

例えばキリスト教では「人は原罪を抱えているので、入信しないと地獄に落ちる」といって、不安を煽っていますし、

仏教でも「輪廻から解脱しないと地獄に落ちるかもしれないぞ」と脅しています。

ともかく、本宗教では教え(1)に不安を煽る文章を追加することにした。

全知全能の存在は、相応しいものに大いなるライトスタッフを授けることでしょう。
逆にライトスタッフを疎かにしていると、自分のライトスタッフを見失ってしまいます。
全知全能の存在が取り上げてしまったのでしょう。
そうなってしまうと、創作物のクオリティが落ちてしまうばかりか、下手すれば完成さえもしなくなってしまいます。
決して一度掴んだ手を離さないようにしてください。

 

  •  民衆に救いを与えたか/現世利益は謳っているか

信者を増やす最も手っ取り早い方法が「この宗教に入るとあなたに利益がある!」と伝えることです。そりゃあ、利益があるのなら入信した方が得ですからね。

本宗教では教え(4)の「ライトスタッフを持つほかの信者と交流すれば自分もライトスタッフを授かりやすくなる」という救いが利益になります

信者と話したら創作アイデアが浮かんできました!ラッキー!となれば、これはもう信者数拡大間違いなしでしょう。

実際、クリエイター同士での談義で盛り上がれば面白い創作のアイデアが出てくると思うので、我ながら良い教えなのではないか・・・と思っています。

 

・オカルトに対応しているか

宗教のはじまりは「個人の霊的な体験」を信じることによってはじまる、といいます。

非日常が窮屈な日常を破壊し、困っている人に救いを差し出すのです。

今回、「全知全能の神」とか「ライトスタッフを授ける」とか、そこそこオカルトチックな文言を追加してみました。

まあ人は本質的に怪異を求めているものです。窮屈な日常に飽き飽きしている人をワクワクさせるようなオカルトを今後も含めていく必要があるのかもしれません。

 

魅力的なコミュニティは作ったか

宗教入信の一番のメリットはコミュニティに属することができる点なのではと思います。

友達が多い方が楽しいですし、困ったときに助けてくれるメリットがありますからね。

宗教運営的な視点から見ても、信者間の繋がりを増やすことで、脱退数を減らすことができますし、相互協力により魅力的な創作物が完成する可能性さえあります。

そのため、本宗教では教え(4)で「ライトスタッフを手に入れるために交流せよ」という旨を書きました。みんな、いろんな人と交流しようね!

 

・信者に義務を与えているか

信者に義務を与えることは「信者がきちんと教えを守っていることを実感させる」効果があります。

これは「信者を精神的に安心させる」ために必要な項目なのです。

頑張れば頑張るほど、人はその対価を安心して受け取ることができますからね。

今回は教え(2)にライトスタッフを見失わない方法について記しました。

一度読んでもらえればわかると思うが、この項目はネタであり、ここでウケを取りたいがためにこの教え(2)を追加しました。

スベっていたらとても恥ずかしい限りですが、固い話ばかりだと飽きてくるので、たまにはおちゃめな一面も必要でしょう。

葬式の方法は用意しているか/偶像は用意したか/食物規制はしたか

このあたりは用意が面倒なので一旦保留します。多分ずっと追加されない項目になるでしょう!

 

まとめ ~深淵を覗くとき・・・~

文字数もいい感じに増えてきたので、ここでクリエイター教の解説を終えます。

もし、クリエイター教に興味を持ってみたら気軽に入信してみると嬉しいです。

もちろん、キリスト教や仏教などの他のガチ宗派に既に入信済みであっても問題はありません。

入退室自由なお手軽ファーストフード宗教を目指しているからです。

また、これを読んだあなたもぜひ時間があるときに「完全教祖マニュアル」を読んでみることをお勧めします。

非常に興味深い内容で、読んでみると「自分も宗教とはいかないまでも、オンラインサロンでも作ってみようかな」となること請け合いだからです。

最後に、この本に書かれていた一説を引用してこの記事のオチとします。

最後に繰り返します。本書は伝統宗教から成功法則を抽出して作られた極めて科学的なマニュアルです。そんな本書が後世に名を残す方法を示し、あなたはその通りに実践してきたのですから、あなたの名が歴史に残らないはずがないのです。信じるのです。本書を信じるのです。信じる者は救われます──。
架神恭介;辰巳一世.完全教祖マニュアル(ちくま新書)(p.220).筑摩書房.Kindle版.

 

 

 ミイラ取りがミイラになってしまいました・・・。