物語基本テンプレを覚えて面白いストーリーを作る!

人の心を動かす物語が作りたいんだあああああ!

でも、どうやって物語を創ったらいいんだああ!

人は誰でも、一度は夢見る欲望があります。

「人の心を動かす物語を作りたい」

平凡な日常をのほほんと生きている私達では、そこまで心動かす話をゼロから作り上げることは至難の業

賢者は歴史に学ぶもの、人間が地球に文明を築いてからずいぶんと時が経ち、それに伴い様々な物語が生まれてきました。

そして、その物語を分類することで「面白い物語」のパターンが薄っすらと見えてきました。

この章では、SAVE THE CAT の脚本作成術から引用して、私の解釈を加えた「物語の基本テンプレ11種」を紹介します。

以下の文章は私の解釈が加わっているので、原典の脚本作成術を知りたい方はぜひSAVE THE CATをお買い求めください。

この記事で書いてあること以外にも物語全体の組み方について事細かに解説しています。

さて、この基本テンプレを抑えておけば、自分の物語はどのパターンに属していて、どこに注力すればよいか見えてくると思います。

このパターン分類の優秀な点は「人間の原理的欲求のどの部分を満たしているか」に基づいて分類している点です。

このテンプレを知ることで「人間の感情の根っこから面白さを考える方法」を論理的に構築することができるので、ストーリーに悩んだ時の指針に役立ちます。ぜひご活用ください。

ちなみに、例に関しては私が勝手に当てはめています。

分類間違ってるだろ!などのご指摘がありましたら、ぜひコメントに記入をお願いします。自分の好きな物語がどのジャンルに分類されるか見てみるとすごく勉強になるので、時間がある方はぜひやってみてください。

・家の中のモンスター

例:ジョーズ恐怖の森five night at freddy
内容:限られた空間でモンスターから逃げる話
面白さ:人間の原始的感情、迫りくる恐怖・逃げる恐怖
オチ:逃げ切ってもいいし、殺されてもいい
工夫:いかに恐怖のモンスターを作るか。いかに追い詰めるか

ホラーゲームはほぼこのジャンルに属するでしょう。

いつ殺されるかわからない緊迫感、そして恐怖の存在から逃亡する物語は快感を与えます。恐らく人間の生存本能に由来しているのでしょう。

コツは「緩急つけた恐怖」を与えることです。ずっと恐怖を与え続けると人の感覚は麻痺してしまうので、「平穏な日常」や「恐怖が起こりそうな不安感」を持続させることを意識しましょう。

人気の理由は原始時代から続く「スリルを感じると興奮する」感情を利用している点です。

人間はなぜか「恐怖」を恐れているのに「恐怖」を求めています。これはとても不思議な話ですね。

・金の羊毛

例:メイドインアビス母を訪ねて三千里スターウォーズ
内容:目的をもって冒険する。その過程で主人公は成長する
面白さ:冒険を通して、いかに主人公が成長するか
オチ:旅を通して主人公が成長する。
工夫:どんな経験をするのか、どう変化するのか

ワンピースなどの冒険ものがこのジャンルに属します。

冒険物語の大切な点は「旅の距離」よりも「主人公の感情変化」の方が大事である点です。

旅を通して主人公がどのように変わっていったのか、この点を注力して物語を考えてみましょう。

主人公の心境変化を効果的に表現する手法として「序盤で登場した出来事を終盤でもう一度発生させる」があります。

例えば、主人公が勇気を手に入れる物語を創作するとします。

序盤で「いじめっこに追いかけられる主人公」を表現して「主人公に足りない要素」を観客に示します。

その後、なんだかんだの大冒険を繰り広げたのち、

ラストで「いじめっこに立ち向かう主人公」を描くのです。

このようにすれば、主人公が勇気を手に入れたことを容易に表現することができるようになります。この手法は結構いろんな映画で使われているので、意識してみると面白いです。

旅を通して、良い方向に変わっていく主人公に人は共感するのです。

・魔法のランプ

例:ドラえもんDEATHNOTE
内容:急に強大な何かを手に入れる。
面白さ:普段手に入らないものを使って、普段できない面白いことをやっていく。
オチ:やっぱ平凡が一番と思う心の変化。
工夫:主人公の心情的変化。

もし普段の生活で絶対にできないことが、できるようになったら・・・。

こういった感情は誰しもあるもので、原理的欲求です。その欲望を叶えるのが「魔法のランプ」や「DEATH NOTE」だったりする訳です。

そして、この物語のオチは「やっぱり平凡が一番良い!」です。

この経験を通して、主人公は「地に足のついた思考」を獲得する訳です。

(または、元の生活を望まずに壮大な死を迎えたり・・・。)

・魔法のランプ(B面)

例:闇金ウシジマくん
内容:嫌な奴が天罰を受ける。
面白さ:悪い奴が苦しめられて面白い。
オチ:更生したり、嫌な奴が死んだりする。
工夫:主人公の心情的変化。

魔法のランプの逆バージョンです。

「急に不幸な目にあってしまう」プロットです。

不幸な目に会った原因は主人公に足りていない要素であり、その足りてない要素を取り戻すことで平穏な日常を手にすることができます。

・困難に直面した平凡な奴

例:異世界転生もの(ブレイブストーリー Re.ゼロとか)・ダイハード
内容:一般人が強大な悪に立ち向かう。
面白さ:一般人がすごく頑張って強大な悪を倒す点。
オチ:強大な悪は滅びる。
工夫:強大な悪は強大であれば強大であるほど面白い

平凡な人間が、事件に巻き込まれ、翻弄されつつも仲間と協力して巨悪を倒す。

観客は平凡な人間が努力する姿に共感し、勇気をもらうことができます。

昔の異世界転生ものはこのジャンルに属していました。しかし、近年「異世界スマホ」など、平凡ではない主人公がこのジャンルのストーリー展開をしている作品が多く見受けられます。観客は感情移入できず、つまらないと思ってしまうのです。

最初から優秀な能力を持っている場合には「スーパーヒーロー」のプロットが当てはまります。「スーパーヒーロー」の項目で説明しますが、優秀な能力を持っている主人公に感情移入させる工夫が必要になるのです。

・人生の節目

例:キャサリン(PS3)ドラゴン桜
内容:人生の節目に、重要な決断をする。辛い経験を得て、解決する。
面白さ:人生の節目の選択は誰にでも来るので、その共感。主人公の成長。
オチ:人生ってこういうものだ!なんで素晴らしいんだ!
工夫:忍び寄るモンスター(離婚とか)にいかに気づき、倒すか。

中年に受ける内容です。受験結婚離婚・・・人生の節目では人間誰しも悩み苦しむものです。

そんな人生の節目で主人公はどのように苦悩し、決断するのか・・・。この葛藤に人は共感するのです。

ゲームでこのジャンルは長い間登場していなかったのですが、最近キャサリンが発売され、大きな話題となりました。

・バディとの友情

例:らんま1/2ラフタイガー&バニー
内容:嫌々組んでいた2人が経験を通して友情を確かめあう。
面白さ:友情を通した主人公の心情の変化。
オチ:「こんな奴と仲良くしていいのかと葛藤」「一度喧嘩などで袂を分かつイベント」「やっぱり最後は一緒だという決意」
工夫:主人公の心情変化、成長

ラブコメは大抵このジャンルに属します。親友か恋愛かの違いは「セックスの有無」だけでしょう。

最後は、固く絆で結ばれますが、その前に必ず「離れ離れになるイベント」があります。

最初はお互いに嫌悪感→徐々に絆構築→「嫌だけど一緒にいる腐れ縁」→離れ離れ→「お前しかいないのだという決断」→固い絆

このジャンルの黄金律です。ぜひこのジャンルを制作するときには意識しましょう。

・なぜやったのか?

例:SCP-587-jp   僕のメジャースプーン(辻村深月)

内容:事件の原因には人の心の闇があったので、それを解き明かす。
面白さ:全ての人に存在する潜在的な悪意を覗き見ること。
オチ:探偵役が観客の意思を代弁して人の心の闇を調べる。人の心の闇の確信は観客が解き明かす。
工夫:心の邪悪さをいかに探ることができるか。

ホラージャンル、推理ジャンルでよく使われます。

主人公(探偵役)が加害者が異常行動を起こす原因を解き明かしていきます。

人間の複雑な感情に少しずつ迫っていき、人の心の闇を解き明かす快感があるのです。

・バカの勝利

例:フォレストガンプサラリーマン金太郎 隠蔽捜査
内容:社会の底辺・愚直な奴が大成する話
面白さ:底辺や要領の悪いやつが大成するカタルシス。バカが実は賢者で、その方法が評価される。
オチ:大成する。友人役の奴は大抵主人公をバカにして失敗する。その後主人公に従って成功する。
工夫:社会のアウトサイダーがいかに勝利を収めるか。

「バカ」と書いてあるのでなんちゅう分類法や!と最初はビックリしていたのですが、よく考えてみるとしっくりきます。

つまり「バカ」と呼ばれながらも愚直に成果を積み重ねていく主人公を見て、観客は勇気をもらうのです。

今野敏の「隠蔽捜査」シリーズもこのジャンルです。主人公は四十六歳、東大卒。警察庁長官官房総務課長ですが、この人の「原理原則を大事にして自分が不利になる不正を告発する」愚直な姿勢に人は共感し、好意を持つのです。

ちなみに、このジャンルの友人役は主人公の愚直な生き方を裏付ける役割であることが多いです。「フォレストガンプのダン中尉」や、「隠蔽操作の伊丹」もこの役割です。

友人は主人公の愚直さを一度は嘲笑うも、大きな痛手を負います。

そして最後は主人公の理念に沿って生きることで成功を収めるのです。

友人は主人公の愚直さを引き立てるために存在します。こう書くと、ある種愚直さを崇拝するような宗教染みていますね。

・組織の中で

例:半沢直樹シンゴジラ

内容:組織が狂ってる、主人公が組織にどう立ち向かうか。
面白さ:組織の中で個人がどう生きるかという悩みの共感。
オチ:主人公は新人からスタート(状況説明のため)。主人公が組織のルールから逸脱する行動をとる。最後には個人を出す。
工夫:組織の中で個人の葛藤。俺と会社、どっちがイかれてるのか!

組織の中では、個人が犠牲になります。急な転勤で家庭はボロボロになったり、会社が不正を指示しているのに、実際に問題が表沙汰になると、トカゲのしっぽ切りのように見捨てられたりします。

それでも組織のために個人は動くのです。そんな組織の狂気を明らかにして、「俺と会社、どっちがイかれてるか勝負しようぜ!」といった流れが主なストーリー展開です。

組織の問題点を明らかにして個人が組織に反発することで、組織に抑圧されている私達は共感し、感動するのです。

・スーパーヒーロー

例:アメコミ系全部 異世界系(異世界スマホとか)
内容:ヒーローは人に理解されない。その葛藤。「なぜ俺の意見が通らないんだ!」という苦悩は一般人にもあるので、共感を生む。
面白さ:周囲から誤解されつつ、それでも戦う葛藤。敵を倒す爽快感。
オチ:悩み吹っ切れて悪を倒して称賛を浴びる。
工夫:ヒーローが抱える悩みにいかに共感させるか。

「困難に直面した平凡な奴」と比較すると最初から主人公に卓越した才能がある場合にはこちらに属します

観客は平凡な奴には感情移入しやすいですが、スーパーヒーローには感情移入しにくいです。一枚壁があります。

いかに感情移入させるか、その工夫が葛藤になります。

ヒーローの卓越した能力、しかし無能な大衆には理解されない。

理解されないで苦悩し、それでも大衆のために活躍する姿に人は共感するのです。

この「人に理解されない苦悩」は一般人である我々も体験したことのある感情です。

この感情をいかに掘り起こすか、これがヒーロープロットで大切な点です。

ちなみに、SAVE THE CATで指摘されていた点として、スーパーヒーロー物の二作目は大体駄作というジレンマがあります。その原因は「作目では苦悩と葛藤があったが、二作目では葛藤しないから感情移入できなかた」ということみたいです。

まとめ 基本テンプレを抑えて、そこから少し変えよう

いかがだったでしょうか。基本テンプレ11種をご紹介しました。

もしストーリー展開に悩んでいる方がいましたら、自分が考えている物語がどこに属しているかを考えると、ストーリーの指針ができると思います。

テンプレを理解することで、「新しいずらし方」も生み出せるようになるでしょう。

読者・プレイヤーは「〇〇と同じような話だけど、違うやつが欲しい!」と常に考えています。

同じの部分はこのテンプレを活用するとよいでしょう。

ちなみに映画だとテンプレは1つだけ使うべし、と明言されています。

これは2時間の枠内に収められるテンプレはせいぜい1つだけ、ということみたいです。本書では2つ以上のテンプレを用いると薄味になってしまうと警告しています。

しかしながら、アニメ・漫画・ゲーム等の別分野においては、複数のテンプレを同時に進める傾向があるようです。

1クールのアニメや漫画を見てみると「メインテーマ全体として一つ、個々の話ごとに一つ」と複数の基本テンプレを重ね合わせて使っているケースが多いように見受けられます。長い話では複数プロットを同時並行で進めて人物像を多面的な視点から表現することで、奥深さを表現しているのだと思います。

私はゲーム制作にこの基本テンプレを活かしたいので、ゲーム制作用に基本テンプレの使いかたを転化させる必要があると考えています。ゲームの特徴は「主人公を操作できること」なので、感情移入の手法がまた変わってくるためです。

転化させるための方法は・・・これから考えます!

みなさんもぜひ、ご活躍されている領域でこの基本テンプレをご活用ください。

そして、興味を持った方はSAVE THE CAT をぜひ買って読んでみると良いと思います。

より詳しい物語テンプレートの解説や、他物語の構築方法、プロットの構成方法が詳しく書かれており、大変おススメです。