3月の暖かい日差しの土曜日、休日。
一人暮らしの朝。近くにはまねっこぬいぐるみ二体。
まねっこアルパカと
まねコッコーだ。
まねっこぬいぐるみは声をかけると、同じ声を返答してくれるぬいぐるみだ。
不思議なもので、まねっこされただけでも会話が成立しているような錯覚を覚えてしまう。
これが面白くて、何度もぬいぐるみに声をかけ続けてしまうのだ。
こんな単純な機構なのにコミュニケーションが成立している気になってしまうのだから興味深い。相手の会話をオウム返しすれば良好なコミュニケーションが成立するのだ。
もしかしたら、この機構を改良していけばコミュニケーションAIマシンが完成するのもそう遠くはない気がする。
そんな科学の最先端を感じたくてつい、まねっこアルパカを購入してしまった。
しょうもないことを吹き込んでは遊んでいたのだが、数日で飽きてしまったので
しばらくは戸棚の奥深くに閉じ込めていたのだ。
月日は流れ、会社退職の送別会にてまねコッコーがプレゼントされたのだ。
さすがに二体はいらんわー!と思っていたが、後輩からのプレゼントなのでありがたくいただく。気の利く後輩で、単三電池もプレゼントしてくれたのだが、あいにくこのぬいぐるみは単四電池で動作するのだ。その場では気が付かないフリをしてしまった。
「二体もいるんだから、会話シーンを動画に撮って送ってくださいよー!」
と後輩は話していたのだがすっかり忘れてしまったまま一か月が経過した。
3月の暖かい日差しの土曜日、休日
そろそろ、まねっこぬいぐるみ同士で会話してみるか。
俺は単四電池を買いに出かけた。
そして、まねっこぬいぐるみ2体を前にして動画撮影をはじめたのだ。
このぬいぐるみ、かわいいのだ。
そんなこんなでお人形遊びにふけるアラサーの土曜日が瞬く間に過ぎていくのだった・・・。