2008年頃のオンラインゲームの思い出

私にとっての高校生活は閉鎖的な環境で周囲に馴染めずに苦しみつづける地獄の日々だったのだが、同時に外の環境に一段と興味を持ち、今後の自分の礎を作っていく期間でもあった。

外の環境に一段と興味を持つ時期なのだから、ついついオンラインゲームにハマってしまうのも致し方ないことである。

当時高校生であった私は、人間関係のストレスを発散すべく深夜遅くまでオンラインゲームに没頭する毎日を送っていた。

オンラインゲームといえば、戦士や魔法使いになってマルチプレイヤーで協力して敵を倒すMMORPGをまず思い浮かべると思うのだが、そちらにはあまり興味がなく、もっぱら仲間を作らなくても遊べる個人参加のオンラインゲームが主だった。高校で友達作りに失敗した自分のただでさえ狭い交友関係はオンラインゲームでも一切広がらなかったし、正直プラスになったことはひとつもない。ただ、なぜか未だに覚えているちょっとした話を残したくなり、この記事を作成した。


当時、アルテイルというカードゲームにハマっていた。オンラインで遊べるカードゲームの先駆け的存在だ。

・アルテイル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%AB

よくあるカードゲームのように、影響力と呼ばれるコストを支払ってユニットカードを召喚して戦わせるゲームだ。
月額無料で遊べる上、カードを用いて4種類のルールで遊べるという、校則でバイトもできずお金に余裕もない高校生にはうってつけのゲームであった。(実際は廃課金優遇ゲームだったのだが)
4種類で遊べるとはいうものの、そのうち2種類はトランプのナポレオンと神経衰弱なので、実質残りの2種類がメインのカードゲーム要素だったのだが、これが面白かった。
特にその中のラヴァートヒーローズというゲームルールは、カード資産がなくても勝てる可能性があったゲームで、当時非常にやりこんだ。

一試合も5分程度で終わり、ブラフ要素も強かったのでこれは面白いと遊んでいたのだが、ある時とんでもない壊れカードが流行してしまい、一気に醒めてしまった。

ということで、ラヴァートヒーローズ以外のカードゲームに手を伸ばすことにした。これがアルテイルで遊べる4種類のゲームのうち最後の1種類である、アルテイルというゲームである。アルテイルというカードゲームのアルテイルというルールであり、少し紛らわしいが、このゲームルールが一番運営が力を入れていた主力コンテンツである。

このアルテイル、ラヴァートヒーローズとは対照的に今考えると中々に課金者優遇のゲームだったように思う。
このカードゲームは「手札=デッキ」というシステムを備えており、最初からデッキのすべてのカードを好きな順番で使うことができた。
つまり手札運に左右されないで戦うことができる。これだけでも強いカードを持つ課金者優遇である。
また、「基本的に同じユニットカードを3枚入れないと使いにくい」ルールがあるので、最高レアである星5のカードを3枚揃えてまともに使うために廃課金者は月50000円以上も投資しているという噂がまことしやかに当時の2chで書きこまれていた。

・以下はアルテイルのニコニコ大百科より引用した、当時のスレに書かれたテンプレコピペである。

https://dic.nicovideo.jp/a/alteil

>「基本無料」とうたっているが、「基本無料」でまともに遊べるネトゲは存在しない。このゲームには無課金、微課金、中課金、廃課金のグループに分けることができる。(2chの本スレ)

>無課金
>残り上位の餌。搾取される層。まともに遊ぶことはできません。ストレスをためるだけです。
>微課金
>無課金よりはマシなレベル。でもやっぱり搾取される層。
>中課金
>新段がでるたびに1万円くらい払う層。下位相手に俺TUEEEできるかもしれない。。
>廃課金
>新段、新EXパックの有力なカードを全種三枚ずつ持っている層。下位に課金豚と罵られている。


当然当時高校生だった自分は、そんな大金をゲームにぶち込む気にもなれず、最高レアリティで性能がぶっ壊れた強カードに蹂躙される日々であった。
現在のソシャゲでよくある「大盤振る舞いのガチャがたくさん引ける魔法石プレゼント!」なんてものはなく、1日ごとに神経衰弱で手に入る30円相当であるゲーム内通貨の30グランをせっせと貯めて150グランのパックを買い足していたものである。小学生がお使いのついでにおつりをもらうような額をせっせとデイリーボーナスとして貯めていたのだ。
そんな中、他のオンラインゲームとのコラボキャンペーンでカードが手に入るぞ!という嬉しいイベントがやってきた。
コラボ先はMMORPGで、この中でキャラを育てて一定レベル達成でカードプレゼント!とのこと。
カード資産が少ない現状でこんな良いイベントはないと早速そのゲームをインストールしてゲームを起動した。ゲーム名は思い出せないのだが、ラグナロクオンラインやウルティマオンラインみたいなオンラインゲームを想像して欲しい。

レベルを上げきったらこのゲームを即やめるつもりでいたので、自分の分身となるキャラクター作成は適当に決めてしまった。髪型にモヒカンがあったので、これは面白いと赤髪モヒカンキャラを作成し、名前は「世紀末の人」と名付けた。これはMMORPG内のほんわかな世界観とはかけ離れた北斗の拳の世界の住人である。

さすがに他にこんなキャラクターを作る奴はいないだろうな・・・とチュートリアルマップに飛んだところ、全く同じ赤髪モヒカンキャラがいた。名前は「汚物は消毒」。完全に同じ世界の住人だ。そして、この名前からわかる通り、NPCではなく中の人がいるようだった。

同じこと考えてる人はいるんだなあと思いながら、このモヒカンキャラを無視してクリック連打で会話をスキップしつつチュートリアルをこなしていた。が、モヒカンキャラも全く同じようにチュートリアルをこなしている。ストーカーされている気分だが、相手も同じ気持ちだっただろう。なんなら途中からくっついてきていたので、意図的にストーカーしていた可能性もあった。

チュートリアルを終えると最初の町に飛ばされるのだが、早くレベルを上げてイベント条件を達成したかった私は武器屋や防具屋を華麗にスルーして初期装備のまま町を出て、早速レベル上げしやすそうな最初の草原へ向かっていった。

最初の敵を無心になって倒していくと、おそらく同じ目的でやってきたモヒカン男も同じように狩りをはじめた。無心でモンスターを倒して経験値を貯めていくモヒカン男二人。

レベル上げから1時間ほど経過し、ようやくレベルが所定の値になった。これにてイベント達成である。この世界にはもう用はない。さらば!と思いつつ、私はどうしても気になってしまったので、モヒカン男にチャットで話しかけてみることにした。

聞けばモヒカン男もアルテイルからイベント報酬目的で来たのだという。彼は社会人でソフトエンジニアとして働いていること、もう深夜2時でそろそろ寝ないとまずいという話をしていた。私も高校生であり、明日は7時出発なことを考えると相当に夜更かしをしていたことになる。草原の上でモヒカン男二人、そういった身の上話に花を咲かせていた。

そろそろ夜遅いから寝よう。アルテイルで会ったらよろしく!と言い残し、ログアウトして寝ることにした。ただそれだけの話である。この後に続く話もない。ただ、当時人間関係で躓きまくっていた自分にとって、このささやかな時間はとても癒しだったし、救いになった。

その後、そのMMORPGはログインしていないし、気づけばアルテイルもサービス終了してしまった。

ただ、なぜか未だにこのモヒカンとの遭遇の話が私のオンラインゲームの思い出として根深く残っているのである。