最初のカマシで離脱しないでええええええ!
この記事は「じゃんけんの手を30手に増やしてみた」の振り返り記事です。
まだ遊んだことがない方はぜひ以下リンクから遊んでみましょう。
5分でクリアできるかと思います。
https://hothukurou.com/game/Janken/index.html
じゃんけんの手を30手増やしてみた
ここまで狙いがわかりきっているタイトル、他にないでしょう。
キャッチーだし、どんなゲームかイメージつくし、「ホントに面白いのか?30手も増やしたら勝ち負けわからないだろう」と半信半疑でプレイするイメージがアリアリと浮かんできます。
世の中のコンテンツって、「実際に遊んで見たいと思わせる誘引力」と「実際に遊んでみて感じる面白さ」、「他人に布教したくなる伝搬力」の3つをいかに高めるかで人気度が決まってきます。
実際に遊んで面白くても、面白そうと思われなければ遊んでもらえないといった問題をそこかしこで目にします。
そんな中で、こんなキャッチーなフレーズ。最高じゃないですか。
そんな狙いもあって作ってみた本ゲームですが、制作二週間目にしてわかってしまったことがあります。
じゃんけんの手を30手にしても別に面白くならない
そう、そりゃあそうだろと。
面白くならないんです。この事実でだいぶ苦しみました。
「プレイする風景は思い浮かぶけど、実際遊んでみると予想通り面白くないゲーム」がこのままでは完成してしまいます。
もちろん、面白くないので伝搬力ゼロです。終わった。さてどうしよう!
もう30枚分じゃんけんの写真取っちゃったよ!
普段剛毛で指毛生えてるけど、ちゃんと剃ってから撮影したのに!
そもそも片手で30ポーズも手の形とれなかったから、一生懸命考えて「エフェクトでごまかす」という発明をしたのに!
毒手まで作ってきたのに!てかこれもうじゃんけんじゃなくて殺人拳じゃん!
と、悩んだ末にふと思いつきます。
このゲームを面白いと思っている製作者の浅はかさが面白いのでは・・・!と。
ということで方針転換して「じゃんけんを30手増やしたボードゲーム制作少女のお話」をベースにすることにしたのでした。
かわいい女の子が作ったゲーム、そしてそのじゃんけんゲームがじゃんけんおはじきゲームへとブラッシュアップされていく成長・・・!
これはいけそうだ、と思って一気に作り上げたのです。
ちなみにおはじきゲームにした理由は「戦わせる手を自分で決めるときに、おはじきという体裁を使うと効率良かったから」です。実装も難しくなかったので、うまく行ったのかなと思います。
CPU強くできたよ よかったよ
以前制作した「おはじきババアが迎えに来る」は、相手の思考があまりにも弱すぎるという弱点がありました。
当時はまだまだソフトウェアエンジニアとしての能力が高くなかったのですね。実は私が職業ソフトエンジニアになったのは2018年からで、2019年の公開当時はまだまだひよっこだったのですね。
https://hothukurou.com/game/Ohajiki/index.html
2022年になり、まあちゃんと相手の思考をもっと強くしたものを作ろうということで、今回相手がじゃんけんおはじきを弾くときには「全部の動作を考えて動作シミュレーションを実施、その中で一番スコアの高い手を選ぶ」というガチな実装をすることにしました。
ここでいうスコアは「敵のおはじき数-自分のおはじき数」です。また、余計に反射したり回りくどい手が選ばれるとエレガントじゃないので、バウンドした回数に応じて微妙に減点したり、すぐに1ゲームが終わるように、あいこで同士討ちの場合は特別ボーナスが入るようにしています。
一回のシミュレートも、本ゲームは30fpsで動かしているので5[s]位で全部停止することを考えると150回while文を回せば結果がわかることになります。
このwhite文の中に当たり判定が入るため、処理回数は多くなりますが、コマ数が最大16個しかないことを考えると、まあ、そこまで重くはないでしょう。
この思考で実際戦ってみたら、まあ強い。
ただ、強すぎたのでこりゃ勝てんと思ったのと、「全パターンを考えるとさすがに重いから、スマホだと動作ラグがひどい」という問題があったので、現在は「1フレームごとに、ランダムなコマにランダムな方向で20回シミュレートさせて、20フレーム後に一番スコアが高かった手の発射角度に乱数をちょっと加えて手元を狂わせる」という作戦をとっています。
彼女との一回目の勝負、かなり弱かったと思うのですが、あれは「1フレームのシミュレート回数を5回しかしない」+「角度決定後に、最大で±25°程度ずれる可能性がある」というめちゃ弱ロジックで動かしていたからなんですね。
これを激難難易度にすると±2.85°しかずれなくなるので、一気に難しくなるわけです。
実装もシンプルにできましたし、いい感じに動きました。ソフトエンジニアになって良かったと思う瞬間です。
プレイデータの解析
さてここからいよいよプレイデータの解析に移ります。
プレイヤーがどこで離脱してしまうのかを分析して、あまりにも多いならば改善して行こうという寸法です。
今回は2022/3/31の公開初日のデータを振り返っていこうと思います。
序盤のじゃんけんで飽きずに、シナリオパートに進んだ割合
今回一番気になる点は、序盤の30手じゃんけんで満足して離脱してしまうユーザーがどれほどいるのかという点です。
テストプレイ時には、「飽きたボタンを押すまで何回でも遊べる」という仕様だったのですが、テストプレイヤーの中で「6連敗して心折れました・・・」と本編に行かずに離脱してしまう方がいたので、公開当時の3/31では「5回プレイしたら強制的にシナリオパートに移行する」という仕様になっていました。
離脱率分析には、「ゲームの各ポイントにプレイヤーがどれほど到達したのか、そのユニーク人数」を見て判断していきます。
まずは、序盤シナリオ到達人数/ゲーム読み込み人数を用いて、序盤のシナリオ到達率を確認します。 果たして結果は・・・!
序盤シナリオ到達率:70.82%
・・・これはかなり低い数字です。3人に1人くらいは最初のじゃんけんだけ遊んで離脱している計算になります。これはちょっと多すぎます。
一応、「ゲームページを開いたが、全く遊ばずに去る人数」もこの中には含まれているのですが、ちょっとまずいので対策が必要です。
そこで、翌日4/1には「強制的にシナリオパートに移動するじゃんけん回数を5回から3回に減らしてみる」という調整を加えることにしました。
これで改善しているのかと測ろうとしたところ、「一度プレイすると次からは序盤シナリオ飛ばしていきなり本編に飛べるため、序盤のシナリオ到達人数が減ってしまって、正しい計測結果が算出できない」という欠陥に気が付き、計測不可能であることが判明しました。
これはミスった!次ちょっと対策練ります!
まあしゃあないので、続いての計測に移ります。
最初の選択肢、どちらを選んだか。
この選択肢ですね。
現実の世界なら、間違いなく「見なかったことにした」を選ぶだろう選択肢です。
果たして結果は・・・!
彼女を追いかける人の方が見なかったことにした人の倍の人数いますね。
まあ、今回のデータの取り方の特性上「両方の選択肢を一応確認する」という人もいるはずなので、参考程度にはなるのですが。
現実では、不思議な怪異を見たり、怪しい人を見つけたりすると、見なかったことにして家に帰って厳重に戸締まりをしてしまうものですが、ゲームの世界では彼女を追いかけた人の方が多かったようです。
各難易度のクリア率
続いては、クリア率を見ていきたいと思います。
計測地点は (その難易度をクリアした人数)/(その難易度に続く選択肢を選んだ人数) で判断します。
ユニークユーザー数で計測しているので、何度失敗しても、1度でもクリアしてしまえばOKということになります。
果たして結果は・・・!
・・・
簡単難易度クリア率:97.01%
強い難易度クリア率:76.64%
激難難易度クリア率:70.73%
簡単難易度はほとんどクリアできていることがわかります。これは予想通りです。簡単だったので。
強い難易度も、そこそこのクリア率です。難しいことは確かですが、リトライ回数が5回もあるため、何度もプレイすればいつかはクリアできるでしょう。
特筆すべきは、激難難易度クリア率が70.73%あるということです。これは予想以上に高い数字でした。
ただでさえ見たこともないようなじゃんけんの手が3種類も登場するにも関わらず、きちんとクリアできていると点はすごいとしか言いようがりません。
激難難易度は、一度簡単か強い難易度をクリアしないと選択できないようになっているため、ある程度の選別が働いたのだと予想できるのですが、それでも想像の数倍高いクリア率だったのでびっくりしました。
難しい難易度をしっかりクリアしてもらえるということは、ゲームが面白かったということにほかならないため、ここから考えると、今回のゲームはことのほかうまくできていたということなのかもしれません。自画自賛になりますが!
ちなみに、公開初日の「各難易度の選択肢を選んだユニークユーザー数」を比較するとこんな感じになります。
簡単難易度に挑戦した人が少ない点が特徴的ですね。
多くのプレイヤーが「強い難易度で勝負」してから「激難難易度で勝負」していったのでしょう。
なぜこうなったのかを推測するに、「最初のおはじきじゃんけんのCPUが弱かったから、余裕だろと思って強い難易度を選んだ」のかと思います。
たしかに、最初のおはじきじゃんけんのCPUは実際かなり弱かったので、この流れも自然かもしれないですね。
ちなみにテストプレイ時は「激難難易度」が初回から選択可能だったのですが、テストプレイヤーのほとんどの人が激難難易度を選択してしまい、あえなく撃沈してしまうという現象が確認できたので、現在のように初回クリアまでは「激難難易度」を選べないようになっています。
ちなみに、今回計測地点がよくなかったため「(クリア時の人数)/(ゲーム読み込み時の人数)」でクリア率の集計を正確にとることができませんでした。
ただ、参考値として、(強い難易度クリア人数)/(ゲーム読み込み時の人数)で統計を取ったところ、41.6%の方が強い難易度をクリアしているということがわかりました。
短編ゲームなので50%以上はほしかったのですが、これはこれで次第点なのではないでしょうか・・・!
まとめ
以上で「じゃんけんの手を30手に増やしてみた」の振り返り記事を終わりにしたいと思います。
思った以上に序盤のじゃんけんから先に進まない方が多かったことが残念だった一方で、最も難しい難易度である激難難易度のクリア率が想定よりも大幅に高かった点が嬉しい限りでした。
ちなみにnoteでは、このゲームの攻略記事を書いています。
なんとこのゲームのじゃんけんの勝敗は数学的に決めることができた!という内容です。
激難難易度で使う6種類の手の勝ち負け表も書いてあるので、クリアできない方はご覧いただけると幸いです。
・じゃんけんの手を30手まで増やして、その勝ち負け判定方法を数学を用いて解説してみた